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R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
第五章

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蓮華

 ガラスの箱が、内側から「僕」によって充填される。

 密閉された空間を青い蔦が埋め尽くし、逃げ場を失った圧力が、ついに限界を超えた。


 ――ぱきん、と、音がした。


 乾いた音が、施設の静寂を切り裂く。

 いや、それはもっと重く、もっと鈍い。

 内側から、自身の骨を砕くような、生々しい破裂音だ。


 強化ガラスが粉々に弾け飛び、廊下の生温い空気が、僕の頬を撫でた。


 誰かが叫んだ。


 ママの声が、まだ鼓膜の奥に残響している。


 ――『逃げなさい』


 逃げる?

 どこへ。


 足元には、ダイヤモンドのように砕け散ったガラスの破片。

 体に繋がれていた管はすべて、僕自身の蔦によって引き抜かれ、床に無造作に落ちている。


 でも蔦は止まらない。

 僕の意志を置き去りに、星の位相に突き動かされるようにして、伸びていく。


 青い光が、血流のように床を走る。


 それは僕の力のはずなのに、どこか他人の呼吸みたいだった。

 星が、息をしている。

 僕は、その肺の中にいる。


 手と足の指から伸びた蔦が、廊下を這う。

 ゆるやかに、確かめるみたいに、壁や天井を撫でていく。


 悲鳴が途切れた。

 刹那の静寂。

 次の瞬間、鈍い破裂音が響いた。


 閃光と衝撃。


 熱線が走り、僕の蔦のところどころが焦げ、千切れて弾け飛ぶ。

 焦げた蛋白質の匂いが、鼻を突く。


 けれど、痛くない。


 そんなものは、とっくに通り過ぎている。


 廊下のスピーカーがキーンと鳴った。


「¶ォ――!! ⌘∅り⟐さ§――!!」


 パパの声だ。

 パパ。もう僕を叱らないで……抱き締めて。


 廊下の向こうに、黒い影が、整然と並ぶ。

 防弾ベストと特殊マスクで個性を消した、武装兵の葬列だ。

 彼らの構える重火器の銃口が、一斉に僕へと向けられる。


 反射的に、蔦が僕を包み込んだ。

 それは、柔らかくてあたたかい。


 マシンガンの轟音が外側で狂ったように暴れ、衝撃が重低音となって伝わってくる。

 でも、内側は驚くほど静かだった。


 とくん。とくん。


 僕の心臓と、星の鼓動が重なり合う。


 僕の蔦が、意思を持った鞭となってしなり、兵士たちの列を一薙ぎにした。

 肉が潰れる音も、骨が砕ける音も、今の僕には、星の不純物が取り除かれる音でしかない。


「kぜ――!! ∋く§°‘ロ⌘kるΘkШろ――!!」


 また、パパの声だ。

 パパ……どこに隠れているの?


 廊下の先――また誰かの影。


()()()が過ぎますね。坊ちゃま」


 久世だ。

 僕の――じゃ、ない……久世。


 軍用ナイフを持って、立っている。

 黒曜石の瞳がまたたいて、金色に変わる。


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