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R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
第四章

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浄化

 頭を撫でられている。それから、耳の後ろも。

 執拗な、けれどどこか温かい感触。


 やめろ――くすぐったい!


 僕はそれを手で払った。


「ばふっ」


 という、どこか情けない声が聞こえた。

 声?


 僕は咄嗟に上半身を起こし、アイマスクを取った。


 ポチ。


 僕の髪は、ポチの涎でべったりだった。

 お風呂もシャワーも、数日に一度しか使えない身としては、殺意さえ覚える。

 勘弁してほしい。


 それはさておき。ここはどこだ。

 僕の体の下には、寝袋が敷いてあった。

 硬いアスファルト――道路?

 さっきまで、僕は施設のベッドにいたはずだ。


 熱風。


 見上げると、夜明けの空を焦がすほどの紅蓮の炎が、僕の視界を焼き尽くした。

『青の光の会』の建物が――燃えている。

 真ん中を貫いていた蔦は、断末魔のような高周波を撒きながら、黒煙を吐き出し、ごうごうと燃えている。


 信者たちが「神」と崇めた異形の柱は、今やただの、巨大な薪となっていた。


 久世は、こちらに背中を向けて、施設の前に立っていた。

 一分の隙も無い、燕尾服姿で。


「お目覚めですか?」


 そう言って、久世は肩越しに、顔だけ僕へと振り返った。


「坊ちゃま」


 その顔は、蜥蜴とかげの形をしている。

 知っているさ。

 それが久世だってことは。


 僕は一瞬、肩が震えて、今はごくりと、固唾を吞んでしまったけど。


「なにを――しているんだ。久世」


 久世はまた、正面に向き直ると、言った。


焚火たきびです」


 焚火たきびではない。

 これは――――放火だ。


「信者の人……とか。――教祖……の、人……は?」


「お知りになりたいですか?」


 酷い、ものの言い方だ。


 けれど、知らない方がいいことも、あるのだ。

 そうは言っても。


 ――僕は、財閥家の子息だ。

 この国を、世界を、導いていくリーダーになるのだ。


 それなのに。

 僕の、執事は、犯罪を。世界が壊れてからずっと、罪を犯している。


 確か僕も、誰かを刺した。


 咎人とがびと


 いや、待て。

 今、世界は崩壊している。

 秩序も。何もかも。ない。


 なら、これは正しいのか。

 それとも、やはり――――狂っているのか。


 そうだ……パパに聞けば、教えてくれる。

 もし、間違っていたのなら、光の入らない蔵に一日入れば、パパは僕を抱き締めてくれる。

 そうだ。パパは絶対に、正しいのだから。



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