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R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
第二章 本州

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 僕は個室を用意された。

 狭い部屋に、高校の保健室にあるような簡素なベッドが一つ。

 窓はベニヤ板で塞がれ、時刻が昼か夜か知るには、隙間から零れる光に頼るしかない。


 僕は、女性を一人、あてがわれた。

 僕の好みじゃない。

 派手な化粧に、嫌悪が込み上げる。

 ファンデーションか、口紅か――安物の香水の匂いが鼻に突く。


 分かったことは、ここは大学の研究施設で、あの武装集団は大学生が殆どで、武器や装備は、「青」に侵食された自衛隊から奪ったものらしい。


 ボスの名前は「鷹宮たかみや」。

 元「人類進化学の准教授」だという。

 成功者ではあるが、研究費のためにパトロンに頭を下げ、知識を搾取されていた側――なのかもしれない。


 僕は、蝋燭がいくつか灯る薄暗い部屋で、ベッドの端に腰を下ろし、自分の右腕を見つめた。

 その「痕」に、隣に座った女が、手を重ねた。


「触るな――!」


 僕は手を引っ込めた。

 女はハッとして、視線を伏せた。


「ご……ごめん……な、さい」


 口紅を塗りたくった真っ赤な唇が、たどたどしく動いた。

 それからサイドテーブルに、華奢な手が伸びる。


「飲む?」


 酒を進められる。

 グラスを持つ女の指が、震えている。

 どこで用意したのか、氷を入れ、そこに、琥珀色のウイスキーが注がれる。


 渡されたそれを、僕は一口、味も確かめずに喉に流し込んだ。


「ケホッ――ケホッケホッ……」


 喉が焼ける。食道を、熱が下りていくのを感じた。胃が拒絶する。

 鼻に抜けるのは、ブナや松を蒸留したような、消毒薬に似た匂い。


 最初の一口で、もう体がアルコールを受け付けない。

 けれど僕は、もう一度、酒を煽った。


 久世は酒を、『毒』と言っていた。

 なら僕は今、毒を飲み込んでいる。


 久世のせいだ。

 全部、久世のせいだ。

 お前が僕を、助けに来ないからだ。


 酔いが、泥のように僕を飲み込んでいく。

 僕は、ベッドに倒れ込んだ。

 シーツからは、知らない誰かの体臭と、果物が腐敗したような匂いがした。

 気持ちが悪い。


 思考が麻痺する。


 疲れた。眠い。もう寝よう。

 目覚めたら、全部夢だったらいいのに。

 そうしたら、きっと、久世も、生きて――

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