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R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
第二章 本州

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霜降る

 誇りを渡してたまるものか。

 僕は、奥歯が砕けるほど顎を噛み締め、目の前の琥珀色の瞳をめつけた。


 けれど――。


 足元から、パキッと、氷が割れるような硬質な音が響いた。


 なん――だ?

 一瞬、思考が凍りつく。

 視線だけを、恐る恐る下へと向けた。


「……っ!?」


 膝を床につける僕の脚から、青い結晶が音を立てて噴き出す。

 それは冬の朝に窓を覆う霜のように、鋭く、そして無慈悲に僕の皮膚を突き破り、コンクリートの床へと根を張っていく。


 パキ、パキパキッ――


 結晶は僕の意志を嘲笑うように、ふくらはぎを覆い、腿を侵食し、僕の身体をその場へと縫い付けていく。


 熱い。いや、痛いくらいに冷たい。

 僕の細胞が、僕の知らない「青い秩序」に書き換えられていく、おぞましい感触。


 目の前の男が、笑った。


「うはっ」


 歓喜と侮蔑が混ざり合った、短い吐息。

 ソファにはべる取り巻きたちは、顔を背ける。


 なんだよこれ。

 なんだよこれ――!?


 いやだ。

 こんなの。いやだ――!!


 ――久世。なにをしている。僕を助けろ!!

 いるんだろ久世。

 生きているんだろ!?


 なんで僕を助けない。


 久世。久世――――!!!!


 ――――ズン。


 世界が、腹の底から震えた。

 地震ではない。もっと重く、粘り気のある地鳴りだ。

 建物全体が、唾液を嚥下する巨大な生き物の喉ぼとけのように鳴動し、一階の爆音も、男たちの下卑た笑い声も、一瞬にして底知れぬ静寂へと飲み込んだ。


 目の前の男の額に、脂汗が噴き出したのを、僕は見た。

 奴は奥歯を噛んで、くうを睨んだ。


 ――ああ。こいつは、『恐れている』んだ。


 そう思った瞬間、また、パキッと音がした。

 見るとそれは、結晶が、僕から剥がれ落ちた音だった。


 一階では、どよめきが起こり始めた。


 無精ひげの男は立ち上げり、僕の横を乱暴に通り過ぎた。

 吹き抜けの手すりから、階下へ向けて怒声が放たれた。


「落ち着け!!」


 その一声で、狂乱の宴は、無理やり再起動したかのように音を取り戻した。

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