表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
第一章 北海道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/56

産道

 青函トンネル。

 海の底。


 管理扉から、僕たちは、地下へと続く階段を下りていく。

 一段、また一段。


 地上の光が、背後で削り取られていく。

 冷たく湿ったコンクリートの匂い。錆と重油が混じった、肺の奥にこびりつくような臭気。


 久世が向ける懐中電灯の光が、壁をなぞる。

 照らされた部分だけが現実で、それ以外は、まだ生まれていない闇のようだ。


 僕の右腕に走る青い血管が、脈打った。

 どくり、と。

 世界と同じ色が、僕の中で動いている。

 悪寒がした。


 もう、夏の風は届かない。

 ツクツクボウシの鳴き声も、完全に途切れた。


 代わりにあるのは、圧迫感だけだ。頭上に積み重なった数千万トンの海の重みが、見えない天井となって、僕を執拗に糾弾する。


 久世が明りを向けた天井には、浸み出た潮の結晶だろうか――鍾乳洞で見るような凹凸が見える。それは、剥き出しになった巨大な獣の、肋骨のようにも見えた。


 所々にある水溜まりを避けもせず、僕は久世に支えられながら歩いていた。

 足音は、やけに大きく響く。

 その一つ一つが、戻れないことを確認するための承認みたいだった。


 僕たちは今、津軽海峡の底で、巨大な産道を通っている。


 この先には、祝福も希望もない。

 全ての悪意から――自分を護る心地好い揺り籠から、肺に満たされたものを吐き出して、苦しみの中を這い出さねばならぬという、事実だけ。


 ただ、次の地獄へ――生まれ直すために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ