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R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
第一章 北海道

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 僕は、喉の奥に引っかかった何かを、無理やり押し込んで言葉を吐いた。


「……ゆいさん」


 声が、思ったより平坦だった。


「僕たちと、一緒に来る?」


 ゆいは、庭の土を見たまま、頷きもしなかった。

 少し考えるように、小さく首を傾げるだけだ。


「ここ、まだあったかいんだよ」


 ゆいは、指先で土を撫でる。


 その指先が、侵食の粉塵で青く汚れていく。

 その青さは、彼女の肌の上で、死の予兆のように不気味で、同時に残酷なほど鮮やかだった。


「こんなになっても、たまにこうやって、草が生えるんだ」


 僕は、何も言えなかった。

 死んだものの世界に固執する彼女の優しさが、僕には、正気を失った執着のように見えて。恐ろしかった。


 風が吹き抜けた。

 青い粉塵が舞い上がり、彼女の髪に絡みついた。


「ねえ」


 ゆいが振り返る。


「怜央くんは、平気なの?」


 その問いが、どこに向いているのか分からなかった。

 両親のことか。

 ここを去ることか。

 それとも――僕自身のことか。


 僕は、ゆいの澄んだ瞳から、目を逸らした。

 僕には彼女を、救えない。


「……行こう、久世」


 言葉にした瞬間、何かが決定された気がした。

 けれど、それが何かは分からなかった。


「はい、坊ちゃま」


 久世の声には、満足げな、ひどく甘やかな響きが混じっていた。

 まるで、僕が()()を切り捨てたことを、祝福しているかのように。


 ゆいは、追ってこなかった。

 カイの遠吠えが聞こえた。

 けれど僕は、振り返らなかった。

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