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R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
第一章 北海道

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物資

 ゼリー飲料のパウチを吸い込みながら、僕はゆいとカイの後ろを歩いた。

 合成甘味料の安っぽい味が、昨夜のリゾットの余韻を汚していく。


「あっちの家、まだ物資が残ってるかも!」


 指を差すと、ゆいは顎に垂らしていたバンダナを引き上げ、手際よく口元を覆った。

 民家の前で、カイが唸り声を上げる。


 ——アレが、いるのか?


 そう身構えた瞬間には、ゆいはすでに手慣れた動作でバールを構えていた。

 二十扉のガラスをバールで叩き割り、奥の玄関扉に手を掛ける。

 乾燥した木材が軋む音とともに、扉が開いた。


 次の瞬間、暗がりから、何かが飛び出してきた。


 青い。

 光を、撒いている。


 人の形をしている、と理解するより先に、鈍い衝撃音が、僕の耳を打った。

 吸い込まれるように振り下ろされた鉄の質量が、肉と骨を無慈悲に粉砕する。

 グチャリ、という、湿った果実を叩き潰したような音。

 それは壁に叩きつけられ、痙攣を一度だけして床に沈んだ。


 ——静寂。


 息遣いだけが残る。

 ゆいは、何事もなかったように、バールに付着した青い体液を、玄関に掛かっていた他人のコートで拭い、家の中へ足を踏み入れた。


 ――僕は一歩、無意識にゆいから距離を取っていた。


 ゆいは女の子で、か弱い。そう信じていたのは、僕だけだった。

 けれどずっと、こうやって、生きてきたんだ。


 玄関には子供の靴、おもちゃと、止まった時計。棚の上の写真立て。この家の『かつての幸せ』の残骸。

 キッチンの冷蔵庫の中身は、鼻を潰すような腐臭を放っている。


 ゆいは薬箱から中身だけを取り出し、リュックに詰めていく。


 僕は黴臭かびくささに耐えかねて、パーカーのチャックを口元まで閉じた。

 僕の隣に立つ久世の、鉄壁のように揺るがない、無機質な気配だけが、今は唯一の安息だった。

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