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感情を知らない王女は、ヤンデレ魔導師に囲われる ――共依存の果てのしあわせ  作者: ゆにみ


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13/20

13、こんな感情抱いてはいけないのに(sideルーク)

 こんな自分の状況すら理解していないような子を――殺せるはずがない。


 気づけば、口が先に動いていた。


 「ひとまず、ここは危険です。俺と一緒に行きますか?」


 「うん、一緒に行く!」


 王女はこくんと頷く。

 俺は王女を抱え、そのまま横抱きにする。


 (......軽い)


 あまりにも軽すぎて、胸の奥がざわついた。


 そして、魔法陣を描き――俺の住む家へと移動した。


 「お兄ちゃんすごいね。これがワープ?」


 「そうですよ」


 「すごーい……! あ、これ……“うれしい”だ」


 無邪気に笑う王女。


 その横顔を見た瞬間、ふと現実に引き戻された。


 (……俺は、何をしている)


 衝動のまま連れてきてしまった。


 本来なら、あの場で殺すはずだった相手を。

 だが、もうそんな気持ちにはならない。

 

 バレたらまずい。俺も、王女も。

 途中で抜けたことも、どうにかなるだろう。


 だが――


 この選択は、あまりにも危うい。


 それでも。


 「……守らなきゃな」


 その言葉は、誰に向けたものだったのか、自分でもわからなかった。




 ***




 こうして、俺は王女と隠れるように生活を始めた。


 年齢は十歳、名前はリシェルというらしい。


 調べてみると、彼女は妾の子であったことがわかった。

 だからあのように冷遇されていたのだろう。

 不幸か幸いか、本人にその自覚はまったくない。


 (あいつらは、本当に……悪魔だな)


 胸の奥に怒りが湧き上がる。


 「ねぇ、ルーク!今日は魔法を見せてくれるっていったよね!」


 「ああ、約束したな」


 リシェルから「敬語はやめて」と言われ、今は自然に砕けた口調で話している。

 まあ、もう王女ではないのだから、問題はない。


 俺は手に力を込め、幻想的な光の蝶を作り出した。

 キラキラと光る蝶たちは、部屋の中をふわふわと舞う。


 「わぁ……きれい……!」


 リシェルの目が、きらきらと輝く。


 「ありがとう、ルーク!」


 「楽しんでもらえたか?」


 「うん! これが“たのしい”なんだね!」


 嬉しそうに笑うその顔に、胸の奥が締めつけられる。


 ――守りたい。


 そう思うのと同時に。


 (……俺が与えている)


 そんな感覚が、どこかにあった。




 ***



 ある日、俺は街に出かけた。

 ……リシェルに告げずに。

 「寂しい」という感情を教えるためだ。


 もちろん、ひとりにするのは危険だ。

 だから家には魔法で結界を張り、状況は常に把握できるようにしている。

 誰も襲うことはできないだろう。


 用事は特になく、ただ時間の経過を確認するように街を歩き、家へ戻った。


 ドアを開けると、リシェルが飛びついてきた。


 「ルーク......! どこ行ってたの......!」


 涙でぐすぐす鼻を啜る音が聞こえる。


 「わたし……ルークがいないって気づいて……涙が止まらなかったの……」


 震える声。


 その言葉に、胸の奥が強く揺れる。


 「……ごめん」


 気づけば、強く抱きしめていた。


 (......泣かせてしまった)


 だがそう思うのと同時に、この状況を喜んでしまっている自分に気がついた。

 

 とりあえず、今は説明しなくては。


 「でもそれが......“さみしい”という感情だ」


 「……これが?」


 「……ああ」


 「いや……っ」


 リシェルの指が、ぎゅっと服を掴む。


 「さみしいの、いや……」


 そして。


 「ずっと一緒にいて……!」


  縋るような瞳で、俺を見上げた。


 ――ぞくり、と背筋が震える。


 (……まずい)


 こんな感情、抱いてはいけない。


 わかっている。


 わかっているのに。


 リシェルが俺を求めるたび、その言葉が、どうしようもなく心地いい。


 「ずっと一緒にいて」


 その一言が、頭の奥に残り続ける。


 ――なら。


 そうさせればいい。


 俺の中に、仄暗い感情が生まれた瞬間だった。

次回もルーク視点!

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