表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された悪役令嬢に、無口な養蜂家が蜂蜜で求婚してきます  作者: 夜凪 蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/31

第8話「この蜂蜜、何の花?」

初めての本格的な採蜜は、蜂たちと暮らし始めて一月が過ぎた頃。


 巣枠がずしりと重い。両面きれいに蓋がけされていて、蜂蜜がたっぷり詰まっている。蜂ブラシで蜂を払い、遠心分離器にセットしてハンドルを回す。


 筒の底に蜂蜜が溜まっていく。甘い香りがどんどん濃くなる。花の蜜が凝縮された匂い。呼吸するたびに甘さが肺に入り込む。


 最初の一瓶を光にかざす。陽に透けて黄金色に輝く。


「……きれい」


 三日かけて瓶十二本。マーヤに六本、ハインツに二本、村長とグスタフに一本ずつ、私用が二本。


 ――パンに塗る量を考えると一週間で消える。


 ハインツの養蜂場に蜂蜜を届けた翌日。内検後に小屋で道具を洗っていたら、ニクラスが入ってきた。片手に私の蜂蜜の瓶。


 蓋を開けて指先に少し取り、舐めた。目を閉じる。


 十秒。目を開けてこちらを見る。


「クローバーが七割。アカシアが二割。残りは野の花」


 蜂蜜の味から花の種類を割合まで言い当てるなんて。


「当たってます。巣箱の周辺はクローバーが多くて——」


「もう一つ。菩提樹が微かに入ってる。南の斜面の」


 教えてくれた蜜源。蜂の飛行ルートを見れば確かに南へ向かう蜂がいたけれど、量はわずかなはず。


「それ、味でわかるんですか」


「わかる」


 ハインツが横から口を出した。


「うちの品質管理は全部こいつの舌に頼ってる」


 ニクラスは黙って瓶に蓋をして棚に置く。


「ニクラスさん。今度、私の養蜂場の蜂蜜を全種類味見してもらえませんか。巣箱ごとの違いを知りたくて」


 目がわずかに見開かれた。


「……いい」


「ニクラス、嬉しいのか」とハインツ。


「……別に」


 耳が赤い。帽子で隠れているけど横から見える。


 帰り際、ハインツが言った。


「あんたの蜂蜜、悪くなかった。水分量がもう少し低ければもっといい」


「はい」


「あと、あいつが他人の蜂蜜を味見するのは初めてだ。うちの以外、興味を示したことがない」


 振り返ったらニクラスが小屋の窓から外を見ていた。目が合って、すっと引っ込む。


 ――窓から見てたのに隠れるの、面白い。味見の日が楽しみ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ