第58話:小さな成功の積み重ね。
今日の屋台営業が終わった。
屋台を畳み、帰路に着く。
オヤジさんに、今日の売り上げを報告する。
俺自身、売り上げはそれほど気にしてはいなかった。
利益はそこそこでいい。お客さんに満足してもらうこと。それが俺にとっての優先事項だった。
俺の報告を聞き、オヤジさんが、ボロボロの大学ノート――屋台の売上帳――をパタンと閉じた。
「……おい、お前さん。今日でちょうど利益が1000万円だ。お前さん、本当に返しやがったな」
オヤジさんは俺に言った。その声には、驚きの色が混ざっていた。
「まさか、本気だったとはな……」
俺は、その言葉に一瞬驚き、そのあと少し笑った。
「……そうですか。じゃあ、明日の売り上げから、俺の取り分を増やしてもらってもいいですかね?」
そんな言葉を、冗談っぽく、オヤジさんに返した。
オヤジさんは笑った。
「……で、これからどうする?屋台、このまま続けるのか?」
オヤジさんが、真剣な表情に戻って、俺に問いかけた。
「……お前さんは、十分働いたよ。お前さんの腕をよりよく活かせる厨房だってあるだろう」
俺は、オヤジさんのその言葉を聞いて、笑ってしまった。
オヤジさんが、意外そうな顔を向ける。
「オヤジさん、何言ってるんですか。屋台を続けるに決まってるじゃないですか。今更、何を言うんですか」
俺は、オヤジさんに答えた。屋台を続ける。そのことに、迷いなどカケラもなかった。
次回予告:
師匠から譲り受けた包丁。
それを研ぎながら、俺は、これまでのことを思い出す。




