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第56話:終わらせた過去。
日曜日の朝。
俺はベッドから体を起こした。
散らかった部屋が、俺の目に飛び込んできた。
――こんなに、汚かったっけ?
忙しさにかまけて、部屋の掃除をすっかり放っておいてしまっていた。
今日は、久々の休日。まとめて片付けてしまおう。俺はそう思った。
不要な物を分別し、ゴミ袋へ詰めていく。
「これは燃えるゴミ、これは資源ゴミ。これは……」
昔使っていた名刺入れが出てきた。
中を確認する。ホテルの総料理長時代の名刺が出てきた。
――そういや、オヤジさんに拾われる前は、未練たらしく、この名刺を見てたっけ……
まだ一年も経ってない。しかし、今の俺には、遥か遠い昔のことのように思えた。
俺は、その名刺を、名刺入れに戻した。
名刺入れごと、「燃えるゴミ」の袋へと放り込む。
まだまだ、片付けないと、今日中に掃除が終わらない。
出てくるゴミを俺は分別していった。
部屋が片付いた頃には、俺は名刺入れのことをすっかり忘れていた。
思い出すこともなく、燃えるゴミの袋を、ゴミ捨て場に運んだ。
綺麗になった部屋を見て、「いい休日だった」と、俺は満足したのだった。
次回予告:
オヤジさんの来店。
差し出した肴への評価。
俺は、気持ちを引き締めるのだった。




