第52話:屋台の未来図。
常連客が、暖簾を上げた。
「店主、聞いたよ」常連客の声が届いた。
「いらっしゃいませ。というか、なんのことでしょう?」俺は驚いた。
「……水臭いなぁ。なんか、抱えてた問題が解決したそうじゃないか」
常連客はそう言って、席に座った。
「……あぁ、その件ですか。まぁ、個人的なことなので……ご心配かけてすいませんでした」
俺は、常連客に頭を下げた。
「なんにせよ、いいことじゃないか。これから、この屋台に集中してもらえる。肴もより美味くなるんだろ?」
常連客は笑顔になるのだった。
今日も、お客さんは、途絶えることがなかった。特に常連客が多く見られた。
俺の事情を知る人もいた。知らない客もいた。ただ、誰一人、俺のことは詮索しなかった。
その態度が、俺にはありがたかった。
俺は、黙って、お客さんに、お酒と肴を提供していた。
「で、この屋台はどうなるんだい?」不意に、常連客の一人が、俺に尋ねた。
「先代から、お前さんと、今回はうまく引き継いだみたいだけど、お前さんの後はどうなるんだい?」
「さて、どうなるんでしょうね」俺は答えた。正直な気持ちだった。先のことはわからない。俺で終わるのかどうか。未来のことはわからない。ただ、一つだけ、言えることがあった。
「運よく、この屋台を見つけてくれる料理人がいたら、俺の全てを教えて引き継がせますよ」
俺は、客に向かって微笑んだ。
「まぁ、全ては『運』任せ、になりますけどね」
そう言って、俺は、今日のおすすめを、客に差し出したのだった。
次回予告:
常連たちの何気ない会話。そこに溢れる屋台への、そして、店主への愛。
そのことを、店主が聞くことはなかった。




