第47話:弟が失ったもの。
定例のホテルの経営会議が開かれた。
低迷している経営状況を打破するべく、社長以下、経営陣全員が揃っているはずだった。
「総支配人はどうした?」社長が言った。
総支配人の席が、空席だった。
「……今朝から、姿が見えません。病欠ですかね?」
「連絡が来てないか、確認しろ」社長は秘書に伝えた。
「……仕方ない。総支配人抜きで、始めるとしようか」
社長がそう告げた。
「動議を発動します」接客担当部門長が手を挙げた。
「次期株主総会にて、社長の更迭を提案します!賛同の方は挙手を!」
社長を除く全員が、挙手をした。そこには、総料理長も含まれていた。
「!」
社長は、声も上げられず、呆然としていた。
「……俺を、俺を更迭、だと……」
「そうです」接客担当部門長が告げた。
「あなたを更迭し、経営再建できるものを新社長に据える。それが、現状、最も『効率』的な対応と、判断します」
「効率の鬼」が、「効率」の名の下に、断罪された瞬間だった。
同時刻。
総支配人は、ホテルの経営情報をすべてノートパソコンに取り込んでいた。
それを持って、対抗するホテル経営会社へと飛び込んだのだった。
「……あのホテルの経営状況です。これがあれば、安価で簡単に買収できるでしょう」
総支配人は、ホテル経営会社の重役にそう呟いた。
重役は、総支配人と握手するのだった。
「超一流のサービスと料理が楽しめる」と謳われた、超一流ホテルの買収が決定的となった瞬間だった。
次回予告:
屋台を遠巻きに見つめる女性。
その女性の後悔とは。




