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第44話:迷いが生まれた夜。
その日の屋台を終え、帰宅した。
ベッドに横になり、天井を見つめる。
あの男の名刺を取り出した。それを改めて見る。
──全国展開。その監修と調理責任者、か。
俺は、想像した。
俺の味が、完全再現されて、チェーン展開されるのなら、一見さんを多く取り込める。全国の人に、俺の味が届けられる。
座席数も増える。常連客を待たせることも少なくできる。
全国展開することで、新しい酒が提供でき、新しい肴のアイデアも生まれる。
悪いことは何一つもない。完全にウィンウィンじゃないか。願ってもない事じゃないのか。
しかし。だが。
何かが、俺の心に引っかかっていた。
「……本当に、それでいいのか?」俺は呟いた。
理由はわからない。ただ、この違和感が、決断を拒んでいた。
どう考えても、提案を受けるのが「正しい」。店舗が増えれば、常連客だって喜ぶだろう。
しかし、何か、納得出来ないないものがあった。
モヤモヤするものが胸にあった。俺は、その正体がわからなかった。
悶々とした日々が続いた。
次回予告:
常連客からの言葉。それは、俺の背中を押す言葉だった。
俺の心は決まった。




