第43話:大手からの正式オファー。
とある日。屋台の開店準備中。
「ご店主様、いらっしゃいますか?」
と、男に声をかけられた。
「突然失礼します。私、こういうものです」
男は名刺を差し出した。そこには、大手全国料理チェーン会社の名前があった。
彼は、企画開発担当と名乗る腰の低い男だった。
しかし、話の内容は、腰は低くなかった。
「あなたの屋台を買い取って、全国チェーン展開したい。ついては、その計画における、料理全般の責任者になってもらいたい」端的にいうと、そういう話だった。
あけすけな、気持ちいいくらいの買収話だった。
詳しくは、我が社で、と担当者は打ち合わせ時間の調整をし始めた。
指定された時間に、大手チェーン店会社のビルへと向かう。
会議室には、担当者と、責任者である部長がいた。その顔には見覚えがあった。
「あなたの料理を食べて、ピンときたんですよ。これは、全国展開するべきだ、、ってね」
この計画の責任者である部長さんは、そう俺に言った。俺は思い出した。以前、常連客に連れられてきた、一見さんだった。
しかし、あの担当者は「料理」に興味を示していないように見えた。俺は、この担当者が、屋台の料理を食べにきた記憶がなかった。
資料を受け取り、その日の打ち合わせは終了した。
「快いお返事、待ってますよ」
帰り際に、部長さんにそう言われた。
正直、迷った。俺は、オヤジさんに相談した。
オヤジさんの答えは簡単だった。
「お前に任せた屋台だ。好きにすればいい」
この屋台の味を、俺の料理の味を、全国展開できる。もっと多くの人に食べてもらえる。
それは、この上ない甘美な誘いだった。
俺の気持ちは、揺れ動いた。
次回予告:
大手チェーン店からの提案。それは魅力的な内容だった。
しかし、俺は、決断できずにいた。




