第39話:客だった誰かが、味方になった瞬間。
なんとか、暴力沙汰にならず、常連客の手助けもあって、迷惑客を追い返した。
あのような迷惑客が来ることに、思い当たる節はなくはなかった。しかし、あいつがそれをするだろうか?「効率の鬼」がするには、効率が悪い行動な気もする。他の誰かの手引きによるものか?一体、誰が……
そんなことを考えていた時、常連客の一人がこっそり俺に話しかけた。
「明日、開店前にお邪魔していいですかね?」
俺はキョトンとした。
「店主さんの問題、お力になれるかもしれません」
そう言い残して、その常連客は帰って行った。
その日の夜、店を閉めたあとも、常連たちの顔が頭から離れなかった。
翌日。
開店準備をしていると、昨日の常連客が現れた。
「昨日のお話の続きですが、その前に。店主さん、前から言おうと思ってたんですがね。職業柄、こういう揉め事、放っておけない性分でして」
常連客が名刺を差し出した。
「私、弁護士をしております。法的な立場から、店主さんの今の問題の解決のお力添えができるかと」
俺は、ポカンとした表情で、その弁護士──口調が固い常連客──を黙って見つめていた。常連に弁護士がいるとは思わなかったからだ。
「不当に付き纏われているのなら、裁判所への接近禁止命令の申立て等で対応できる可能性が高いです。あなたの場合、他の常連客の目撃証言が取れるので、証拠の面については問題ないでしょう。ただ、『確実に勝てる』というわけでもありません。そこはご承知おきください」
状況を包み隠さずその弁護士に話した。弁護士は、非常にビジネスライクに、相手を抑える方法を提言してきた。
「もし、次に屋台に現れたとき、私が同席していたら、私の方から『これ以上の嫌がらせは、法的手段に訴えますよ』と警告しましょうか?ちょっとリスキーな行為ではありますが」
「……タイミングが合えば、そうしていただけるとありがたいです」
「お話を聞く限り」弁護士は話を続けた。「あのホテルの関係者からの、あなたへの接触が増える可能性が高いことが伺われます。ですので、その相手と、私が出会う確率は高いと思いますね」
そして、弁護士は、ニッコリと笑った。
「私も、この屋台の味のファンですからね。この味が失われるのを止められるなら、頑張らせていただきますよ」
俺は、深々と頭を下げるしかなかった。
次回予告:
再び、元・副料理長がやってきた。
それでも、俺の心は変わらない。




