第27話:取材依頼は、すべて断った。
「すいませーん。店主さん、いますかぁー」
今日も、開店前に呼ばれた。
「すいません。まだ開店準備中なんで。本日の開店は一時間後です」
俺は、いつも通り答えた。一体、いつになったら、この状態は解消されるのだろう。
「あ、開店前に伺いたいことがありましてー」
何か問題でも起きたのだろうか。俺は、開店準備の手を止め、声のする方向に向かっていった。
そこには、ヒョロリとした若者が立っていた。俺を見て、ニコリと微笑む。
「何かありました?」俺は声の主に尋ねた。
「この屋台の店主さんですね。すいません、突然お伺いして。連絡先がわからなかったものですから」ニコニコしながら、若者は口を開いた。
「実は、我が出版社で『隠れた名店』特集を企画していまして。つきましては、こちらの屋台を紹介させていただきたく、お伺いした次第なんですが」若者はそう言って名刺を俺に渡した。
「……つまりは、雑誌の取材、ということ?」
「はい。是非、記事にさせていただきたく思いまして」
「……申し訳ないですが、取材はお断りします」
「ご快諾、ありがとうございま……え、取材を断るんですか?」若者の声が驚きに変わる。
「私どもの雑誌に掲載されれば、客足が増えること間違いなしですよ?グルメガイドとしての地位が確立されている我が誌に載れば、繁盛間違いなし、ですよ?」
「いえ、それはもう、間に合ってるんで」俺は答えた。
「今も、ただでさえ、客が多過ぎててんてこ舞い。キャパオーバー状態なんです。これ以上、客が増えたら、料理の味も落ちかねないんです」
俺は力強く言った。
「ですので、取材はお断りします」
出版社の若者は、こちらの意図を「理解できない」という表情をした。
「……なぜ断るんですか?断る理由がわからない。そんな訳のわからない理由で断った店なんていませんよ?」
「よそはよそ。うちはうち、です。とにかく、取材はお断りします。仕込みの準備があるんで、これで」
そう言って、俺は踵を返した。開店作業に戻る。
後ろから、若者の罵声が聞こえたような気がしたが、気にしないことにした。
一人でできる限界。それを俺は意識し始めていた。
――SNS投稿のための撮影も断った方がいいのかもしれない……
俺は、そんなことを考え始めていた。
次回予告:
SNS効果は、まだ続く。それは、必ずしも良いことばかりではなかった。
その混乱の中、俺は「守るべきもの」を改めて見つけたのだった。




