第26話:顔出しを断る理由。
「すいませーん。写真、いいですかぁー」
一見客の声が届いた。俺は、迷ったが、昨日、心に決めた言葉を口にした。
「申し訳ないです。SNS投稿をするのなら、撮影はやめてくれませんか?」
「えー、どうしてですかぁー?」
「これ以上、お客さんが増えても、こっちが困るだけなんです。申し訳ないですが、SNS投稿はしないでください」
「えー?残念ーもったいなーい」
そういって、一見のお客さんは帰路についた。
昨日、俺は、決めたのだ。これ以上の露出はしない。常連客が入れない状況を回避できるなら、一見さんが減っても構わない、と。
「店主さん、ネットで宣伝しないんですかぁ?開店情報とか、店主さんの顔とか、映えると思うんですけどー」別の一見客が言った。
「申し訳ないですが、そういうのに興味ないので。私の顔は、決して撮らないでくださいね。お願いしますよ」
「ネットに情報がないと、見つからないですよ、この屋台ー」
そう言う一見客を宥めつつ、営業を続けた。
「……お疲れさん。あんまり無理しないようにね」
常連客が俺に声をかけた。その程度には、疲れた表情をしていたのだろう。
「お気遣いありがとうございます。なんとか、クオリティは落とさないようにしますんで……」
俺は、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「SNS投稿禁止」が効いたのか、その日を境に、客足は落ち着き始めた。少なくとも、捌ききれない行列ができる日は、確実に減っていった。
次回予告:
屋台営業の混乱はまだ収まらない。
とうとう、俺が罵倒される事態にまで発展するのだった。




