偽物の勇者
王都に到着すると、大通りには巨大な肖像画が掲げられていた。
描かれているのは勇者アルド。
民衆は彼を称えている。
「これが英雄?」
リゼが呟く。
「違う」
俺は言った。
「この絵には、仲間がいない」
その時。
「当たり前だろ」
背後から声がした。
振り返る。
白い鎧の青年。
「勇者アルドは一人で魔王を倒したんだ」
彼の胸には王家の紋章。
名前は――アルド。
現在の勇者。
「……同じ名前」
ミアが呟く。
「勇者の血を継ぐ者だ」
青年は胸を張った。
「王国騎士団所属。勇者アルドの末裔」
俺は彼の剣に触れた。
記憶が流れる。
青年が誰かに命令されている。
『勇者の名を利用しろ』
別の記憶。
『本物のアルドの記録は、絶対に残すな』
俺は手を離した。
「偽物だ」
「何?」
「その剣、誰からもらった?」
青年の顔が引きつる。
周囲がざわつく。
俺は剣に残った記憶を公開した。
本物のアルド。
仲間たち。
魔王。
そして、王都の人間による記録改竄。
民衆は騒然となった。
青年が剣を抜く。
「黙れ!」
俺は動かなかった。
リゼの矢が剣を弾く。
ミアの魔法が地面を凍らせる。
勇者は倒れた。
だが。
俺は彼を笑わなかった。
「お前も利用されてる」
青年が顔を上げる。
「……何?」
「本物の勇者の名前を使わされてるだけだ」
その夜。
青年は俺たちの部屋を訪れた。
「頼む」
頭を下げる。
「本物の勇者が何をしたのか、教えてくれ」
俺たちは新しい仲間を得た。
そして。
王都の地下へ向かうことになった。




