消えた魔法使い
王都へ向かう途中。
俺たちは一人の魔法使いを拾った。
正確には。
道端で倒れていた。
「死んでる?」
「生きてる」
リゼが確認する。
俺は彼女の杖に触れた。
記憶が流れ込む。
この少女は、王都の魔法学院に所属していた。
名前は――ミア。
そして。
彼女も「消された人間」を探していた。
「起きろ」
「……水」
ミアは目を開けた。
「ここは?」
「森」
「あなたたちは?」
「冒険者」
「そう」
彼女は安心したように目を閉じる。
そして突然。
「勇者の仲間を探してる?」
俺とリゼが固まった。
「なんで分かる?」
「顔に書いてある」
ミアは笑った。
「私も探してるから」
彼女は王都の魔法学院で、古代魔法について研究していた。
三百年前。
魔王討伐後に、五人の勇者たちが使った魔法がある。
だが、その魔法は歴史から消されている。
「何の魔法?」
「忘却魔法」
ミアが答えた。
「人や物だけじゃない。記録そのものを世界から消す魔法」
「そんなもの……」
「ある」
彼女は俺を見る。
「そしてあなたの【記憶喰い】は、その魔法に対抗するための能力」
俺は黙った。
五年間。
俺は自分を無能だと思っていた。
けれど。
この力は。
最初から何かのために存在していたのかもしれない。
「三人になったね」
リゼが言った。
「勝手に仲間にしないで」
ミアが笑う。
「でも、王都には一緒に行くんでしょう?」
「……まあ」
俺たちは歩き出した。
その背後。
木の陰から誰かが見ていた。
「見つけた」
男は小さく呟いた。
「記憶喰いが、目を覚ました」




