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地図にない村

 村を出て二日。

 俺たちは森を抜けた。


 少女の名前はリゼ。

 彼女は、地図にない村で育った一人だった。


「かなり人が少なかったが、他の住民は?」


「みんな王都へ連れていかれた」


「殺された?」


「分からない」


 リゼは俯いた。


「だから探してる」


 王都へ行くには金が必要だった。

 そこで俺はギルドの依頼を受けた。


 荷物運び。

 薬草採取。

 魔物の巣の調査。

 どれもFランク向けだ。

 だが。

 俺の能力は意外なところで役に立った。


 薬草に触れれば、毒草との区別がつく。

 古い罠に触れれば、仕掛けた人間の記憶から解除方法が分かる。

 壊れた魔道具に触れれば、かつての使い方が分かる。


 俺は気づき始めていた。

 俺のスキルは、戦闘には向かない。

 でも。

 冒険そのものとは、相性がいい。


 そんな中、ある依頼を受けた。


「廃坑の調査?」


「そう。最近、内部から魔力反応が出ているらしい」


 ギルド受付嬢が言う。


「危険度はD程度」


 俺とリゼは廃坑へ向かった。

 内部には古い採掘道具が転がっていた。

 俺が触れる。

 鉱夫の記憶。


『ここは掘るな』


 別の鉱夫。


『奥に何かある』


 さらに奥。

 巨大な扉。

 そこに刻まれていた文字。


――記憶を捨てた者は、門を開ける。


「何だ、これ」


 リゼが近づく。


「文字が読める?」


「古代語」


 彼女が答える。


「私の村では、これを使ってた」


「じゃあ開けられる?」


「たぶん」


 扉が開いた。

 中には何もない。

 ただ一冊の本が置かれていた。

 俺が触れる。


 瞬間。

 大量の記憶が流れ込んだ。


 王都。

 神殿。

 勇者。

 そして。


 俺と同じ【記憶喰い】を持つ人物。

 その男は、三百年前の勇者パーティーの一人だった。


「……俺と同じ能力」


 男が笑う。


『もし次に、この力を持つ者が現れたなら』


 視線がこちらを向く。


『お前は、きっと俺たちができなかったことをする』


 そして最後に。


『王都を信じるな』


 本が燃えた。

 俺たちは顔を見合わせた。


 王都には。

 俺たちが知らない秘密がある。


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