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忘れられた魔王
――国王との戦いは、想像よりも短かった。
国王自身に戦闘能力はなかった。
彼が恐れていたのは。
俺のスキルだけ。
「どうして記憶を消した?」
俺は尋ねる。
「人間は真実に耐えられない」
「それを決めるのは、お前じゃない」
「違う!」
国王が叫ぶ。
「真実を知れば、また戦争になる!」
その言葉には。
少しだけ本当の意味があった。
過去に真実が公開された時。
国同士が争った。
だから初代国王は、全てを消した。
魔王を悪に。
勇者を英雄に。
人間を被害者に。
そうして世界は平和になった。
「だから今も続けてるのか」
「そうだ」
「じゃあ、魔王は?」
「……」
国王が黙る。
俺は答えを理解した。
魔王は今も。
世界の裏側で人間を守っている。
三百年間。
誰にも感謝されず。
誰にも知られず。
「だったら」
俺は言った。
「もう、終わりにしよう」
その瞬間。
王城の窓が砕けた。
黒い光が空を覆う。
現れたのは魔王だった。
だが。
彼は俺たちの敵ではなかった。
「始まるぞ」
魔王が空を見る。
「何が?」
「記憶を戻す時だ」




