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「スマホ脳」のその先へ~高度洗脳社会を生きる~  作者: 三津朔夜
第6章 主導権は、環境から取り戻す――意志より先に変えるべきもの

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環境を変えることは、敗北ではなく防衛である

 環境を変える。少し遠ざける。見ないで済む仕組みを先に作る。

 そういう工夫を、弱さのように感じる人もいると思う。


 見えないようにするのは逃げではないか。

 最初から遠ざけるのは、負けたことになるのではないか。

 もっと正面から向き合うべきではないか。


 しかし今の環境の前では、その考え方は少し危うい。

 こちらは一人の人間だ。向こうは何か単純な仕組みではない。


 マーケティング心理学の研究者、ビッグデータの解析者、アプリの設計者、広告の作り手。 企業も、小さなコミュニティも、個人の発信者も、公式も非公式も関係なく、多くの人間が組織立って、他人の可処分時間を奪い合っている。


 しかもその設計は、人間の反応の癖を知り尽くしたうえで、日々精度を上げ続けている。

 そこに毎回、一人の意志だけで立ち向かおうとする。

 それは勇敢に見えるかもしれない。


 実際には、自分を必要以上に消耗させることにもなりやすい。

 スポーツでも、毎回ぶつかって耐えるだけが強さではない。

 危ない場所に最初から立たない。持久戦になりそうなら、配分を変える。勝てる形に持っていく。 それは臆病なのではなく、現実を見た戦い方である。


 それと同じで、反応させられる社会の中で環境を整えることも、敗北ではなく防衛だ。 自分がどういう条件で崩れやすいかを知ったうえで、先に守りを置くこと。


 それだけのことだ。

 意志の強さだけでは、足りない。

 少し消耗が減るだけで、考える力が戻る。焦って決める回数が減る。比べて揺れる時間が減る。そのぶんだけ、自分で選べる場面が増えていく。


 留意すべきは、完璧を目指さないことだ。 一度も崩れないこと、一度も振り回されないこと。 そういう目標を立てると、また別の苦しさが生まれる。


 崩れないことが、重要なのではない。

 崩れやすい場所を知っておくこと。崩れたあとに、また戻れること。自分を責めるより先に、条件を見直せること。そのほうが、ずっと続く。


 主導権とは、何一つ動じないことではない。

 揺れながらでも、自分にとってマシな条件を選び直せることだ。

 だから、環境を変えることを軽く見ないでほしい。

 それは気休めではない。甘えでもない。人間の反応の仕組みを踏まえた、かなりまっとうな防衛である。


 ただ、この防衛は、外側の条件だけで終わるものでもない。環境を整えることは大事だ。 けれど同時に、反応してしまう自分をどう受け止めるのか。崩れたときにどう戻るのか。 その内側の態度もまた、同じくらい大事になる。


 次の章では、その話に進みたい。環境の外側だけでなく、心の内側からも主導権を取り戻す道を考えていく。

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