反応しにくい条件を、先に作る
人は置かれた場所に引っぱられるとすれば、主導権を取り戻すためにまず考えるべきなのは、どうやって自分をもっと強くするかではなく、どうやって反応しにくい条件を先に作るかだ。
ここで大事なのは、我慢の回数を増やすことではない。
むしろ逆で、我慢しなければならない場面そのものを減らすことである。
目の前にあれば開いてしまう。
すぐ返せるなら返し、すぐ買えるなら買ってしまう。
そういう反応は、意志が弱いから起きるのではない。
それだけ反応しやすい条件がそろっているから起きる。
だから、変えるべきなのはまず条件のほうだ。
ここで効いてくるのは、ほんの小さな摩擦である。
すぐ開ける。すぐ押せる。すぐ買える。
そうした「すぐ」が続く環境では、反応がそのまま行動になりやすい。
けれど、その間に少しだけ手間が入ると、人は一度止まりやすくなる。
スマホが手元にない。 通知がすぐ見えない。アプリを開くまでに一手かかる。
この小さな面倒は、一見すると不便だ。けれど実際には、その不便さが、反応と行動のあいだに細いすき間を作る。
その隙間が大事だ。反応した瞬間に、そのまま動いてしまう。それがいちばん危ない。
逆に言えば、少し止まる。一度ずれる。すぐ届かない。 その条件があるだけで、かなりのことが変わる。
重要なのは、強い意志を持つことではなく、弱さが出やすい場所を減らすことだ。
自分は夜になると判断が雑になるのかもしれない。通知が見えるだけで気が散るのかもしれない。
疲れているときに動画を追ってしまうのかもしれない。
そういう自分の反応の癖が分かっているなら、その癖に合わせて先に条件を変えればいい。
これは、ブレインハックへの対抗設計だ。
向こうが人間の反応を前提に環境を作るなら、こちらも自分の反応を前提に環境を作る。 発想は同じで、使う方向が違うだけだ。




