人は、置かれた場所に引っぱられる
人は、自分の意思で動いていると思っている。
もちろん、それはまちがいではない。
だが実際には、どこに置かれているかによって、行動はかなり変わる。
目に入るものが気になる。手の届くものを使ってしまう。先に並んでいるものを選びやすい。そうしたことは、意外なほど多い。
たとえば、机の上にスマホがあるだけで、気にする回数は増える。
通知が来なくても、視界に入るだけで意識がそちらへ引かれる。
逆に、少し離れた場所に置かれていれば、手は伸びにくくなる。
そこに特別な精神力はいらない。ただ、距離が変わっただけだ。
買い物でも似たことが起きる。
おすすめが最初に並んでいれば、それを基準に見始める。
高いもののあとに少し安いものを見れば、得に見える。
自分で選んでいるつもりでも、選び方の入口はかなり前から整えられている。
つまり人は、何を考えるかの前に、何に最初に触れるかでかなり引っぱられる。
これは、意志が弱いという話ではない。 人間はそもそも、置かれた環境の影響を強く受ける。全く影響されないほうが不自然だ。
第1章から見てきたことも、結局はそこにつながっている。
通知、レコメンド、短い動画、広告、ポイント。
どれも、ただ情報が存在しているのではない。
先に目に入るように置かれ、反応しやすい順番で並べられている。
それゆえ、環境を変えるという発想は逃げではない。
人が置かれた場所に引っぱられる生きものだと認めたうえで、引っぱられ方を先に調整するということだ。
目に入るものを変える。手の届く場所を変える。最初に触れる順番を変える。
それだけで、反応の起こり方はかなり変わる。




