ポイントは、なぜこんなに気になるのか
アカウントに貯まったポイントは、小さな報酬である。一回ごとの金額は大きくない。だから軽く見やすい。
実は、その軽さこそが強い。
少し得をする。使わないともったいない気がする。あと少しで条件を満たせる。
そう思うと、人はかなり簡単に動く。
その規模は、すでに生活インフラと言って差し支えないほどだ。
矢野経済研究所の調査によれば、国内のポイントサービス市場は2023年度に2兆6,569億円規模に達し、なお拡大が見込まれている。
つまりポイントは、もう「おまけ」ではない。
日常の購買行動そのものに組み込まれた、行動を誘導する仕組みだ。
ポイント制度がうまいのは、大きな快楽ではなく、小さな得の積み重ねで行動を習慣化するところにある。
今日はポイントが多くつく。今月中に使わないと失効する。あと少しでランクが上がる。 こうした設計は、一回一回の刺激としては弱い。
だが弱いからこそ、生活の中に自然に入り込む。
しかも、ポイントはお金そのものではないように見える。
現金を払う痛みが少し薄まる。
実際には出費しているのに、「得した感じ」のほうが前に出る。
この感覚のずれは小さいが、繰り返されると大きい。
問題は、ポイントがあることそのものではない。
その小さな報酬が、行動の基準を少しずつずらしていくことだ。
気づけば、得をしているつもりで、判断の軸そのものがポイントに寄っていく。
その小さなずれが、日常の中ではいちばん見えにくい。




