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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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119/127

第119話 呪い対策1

 お兄様を人間の元から引き離すためとはいえ、真名の強制力で精霊化を命令してしまった。自己嫌悪と悲しさを抱え、しばらく引きずることになると思っていた……


 ……そんなことはなく……


「……お兄様、くっつきすぎ!」


 もう、とにかく気配がうるさい。感情がそのまま流れ込んできて落ち着かない。

 いつもそばにいる光の精霊みたいに声を届けてくるわけではないのだけど、いつも周りにいて、いちいち感情が伝わってくる。


 四百歳を過ぎていれば、精霊になった後もずいぶんはっきりとした思考を持つのだろうと思うのだけど……だけどね!

 精霊ってそんなに存在感をアピールしてくるものじゃないでしょうよ!


「もうっ! お兄様は気配が消せるようになるまで近づかないで!」


 光の精霊が寄ってきてお兄様を包んで部屋の隅に運んでいく。大小の光がふるふるしているところは、見ているだけならなんだかほほえましいのだけど……


『アルシェイラ……もう兄じゃないって言ってる……』


 光の精霊まで困惑している。


「そう……そういうこと言うの……」


 子供かっ! いや、精霊だから子供っぽい思考になっちゃっているんだろうけど。


「気配の消せない精霊は呼ぶまで近くに寄らないで!」


 さわっと周り中の空気が動揺する。


 ……いや、みんなはちゃんと気配を消しているでしょ?

 感情を伝えるのだって、こっちが望まなければ伝えてこないし。そういう気遣いができる子はそばにいても気にならないのよ。

 でも四六時中、気配を感じ続けるのはうっとうしいのよ! こっちの気が狂うわ!


 さすがに反省したのか、お兄様は光の精霊と離れた場所にいる。たまに存在が薄くなるから気配の消し方を教えてもらってるのかしら?

 いつの間にか小さい光がもう一つ寄り添っている。あの子はお兄様にずっとついていた子かしらね? 先輩としてしっかり教えてあげてね。



 そんな騒動のおかげか部屋に引きこもる時間も短くなってきた頃、王都から呪いに関する研究書の写本が届いた。


「……これは、読み応えのある量ね……」


 みかん箱ほどの箱に、みっちりと詰まっている。しかも分厚い羊皮紙ではなく薄い紙だ。

 同封されていた手紙を見ると、写本だから返さなくてもいいけど、あたし以外の者には読ませないように書かれていた。


「これ、本来は外に出してはいけない研究書なのでは?」


 とりあえず束ねられているのを一つ一つ箱から出しながら魔力錠をかけていく。これであたし以外には読めなくなる。魔力錠をかけたものはマジックバッグにしまっていく。


 ここまでしてもらったのだからしっかり結果を出さないとね。

 お礼にできた解呪の魔法陣を魔道具にして送ろうかしら?

 陛下が相手なら、呪いより毒の方が役に立つかしらね?



 後日、レオンハルト様にお礼ならどっちがいいか聞いてみたら、目が笑っていない笑顔になった。


「先生? 報酬に対してお礼はしません。しかも魔道具なんて、こちらがさらに報酬を出すべきものです」


 魔道具って、そんなに高価なの?

 ……あ、でもよく思い出してみたらラノベでも買えないってエピソードは多かった、かも?


 あの、そんなに圧をかけなくても魔道具を渡しません。ちゃんとわかりましたから大丈夫です!


「あ、でもこちらの魔道具は地下畑の管理に必要になるものなので、レオンハルト様専用として持っていてくださいね」


 ちょっと前に騎士団長へ渡した、通行証に魔力を登録するための魔道具と、通行証そのものを作製する魔道具を渡す。


「管理者が変わったときは今からやってみせるマスター変更をしてくださいね。これらの魔道具はマスター一人しか扱えないようになっていますから」


「……またこのようなものを次々と……」


 レオンハルト様がどこか遠い目をしているけど、これらは地下畑を管理する上で必要なものなので!

 さすがに通行証を作るためだけに必要な錬金術を教え込むわけにもいかないですからね。あ、通行証の材料になる魔導銀もお渡ししておきますね。あたしの魔力を練り込んだ魔導銀です。これが尽きたら、別の素材でも認識できるよう設定を変更してください。


 あと、魔力認証つきのマジックバッグを作っておいたので金庫代わりに使ってくださいね。このマジックバッグは、地下畑から持ち出そうとすると壁のガーゴイルが反応するようにしています。設定はここの部分ですね。


 ここまで一気に説明すると、レオンハルト様が頭に手を当てて考え込み始めた。

 ……難しかったかな?


「先生が防衛のために作ってくれた。それはわかる。わかるのですが……」


 小さく呟いた言葉が聞こえる。

 あれ? これは……またやりすぎて怒られるやつ?


「ありがとうございます。管理に関することなので父上に報告させていただきますね」


 笑顔だけど、喜んでいる笑顔ではないですよね?

 これはまた報酬が、とか言われそうだわ……そうだ!


「えっと……実は少し無理なお願いもありまして……」


「なんでしょう?」


「危険物として回収管理されている物の中に呪いを付与できる呪物があればお借りしたいのです。あと、その呪物によって付与された呪いを解除する手段も、あわせて手配していただけると……」


 とても詳細な研究書をいただけたから解呪の魔法陣はできると思うのだけど、呪いを実際に解呪してみないと本当に完成しているのかわからないのよね。

 だからそれを確認するためにも必要なのだけど……レオンハルト様の表情が厳しい。これはちゃんと理由を言わないと借りられそうにないわね。


「解呪の魔法陣を組むのですが、実際に作用するか試してみないと……いざ使ったときに『うまくできていませんでした』では困るのです」


「……わかりました。父上に交渉しましょう」


「お願いします」


 これで呪物を借りられれば、実際に解呪できるか確認できるわね。

 ……この無理なお願いも報酬にしてもらえたら嬉しいな……

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