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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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116/125

第116話 エルヴァリエルの現状

 あんまりな内容に気が立ったままエルヴァリエルの族長との会話を終わらせる。

 おじい様のこととか、エルフの森のこととか、確認したいことはまだあったけど、これ以上会話を続けるのは無理だわ。


 少しして心が落ち着いたら、入手できた情報を整理する。

 でも、わかったのはお兄様とアイラがどのようにして人に捕まったのか。その状況だけだ。それがわかっただけでも……それに……


「よく考えたら、別に祝福のために戻れと言われたわけでは、ないわね……」


 話の流れと命令形で言われたから、つい祝福が必要だからと思い込んでしまったけど……族長も頭の隅では考えていたのかもしれないけど……心配して戻ってきやすいように言ったのかもしれない?


「……わかりにくいわ……」


 それはともかく……


 お兄様とアイラが話をしている間に捕まったと詳細を知っているってことは、族長もその場にいたのよね?

 どうしてすぐにアイラを結界の中に連れ戻してくれなかったのかしら?

 話をしてこいって族長が許可したの? でもそれなら、まだ結界内にいるときに会わせるわよね?


「お兄様の追放を知って、アイラが追いかけた、かな?」


 あたしの追放のときだって、誰も知らせなかったのに飛んできた。きっとあの子は、集落から出た後でも、結界から出た後でも、自分が思うままに追いかけてくる。


「しばらくは、『自分も!』って飛び出してくるのではないかと精霊に確認してもらっていたっけ……」


 そんな心配をしていたのも三日くらいだったけど……泣いてはいるけど、追いかけてくるような気配がなくてほっとしたのよね。


 追いかけてきてくれていれば……


 頭を振る。そんなものは結果論だわ……あたしだって、おじい様とお兄様がいるからって心配していなかったのだもの。


 お兄様が追放されて、結界の外で足止めされているときにアイラが追いついた。

 そこで二人とも人に捕らわれて、おそらく拷問された。苦しさから、自ら精霊となった……


 涙がこぼれる。


 アイラが精霊になったのは変わらない。変わらないけど……これで何があったのか、だいたいわかった。

 よかった……お兄様が、アイラを差し出したわけじゃなくって……疑って、ごめんなさい。


 そして……


「許せない……」


 あたしが狙われるのなら、守る方法はいくらでもある。でも、何も知らない他のエルフを狙うなんて……結果、あたしの大事なものを……奪っていった……


 許せない……


 復讐したい……


 そんな黒い考えに塗りつぶされて、あたしはやっぱり人間寄りの思考なのだと改めて思った。


 ごめんね、精霊。

 あたしは、あなたを純粋な精霊には育てられないかもしれない……


 体の中心でふわりと許してくれた気がしたけど、それはきっと、あたしがそう思いたいだけね。


 ◇◇◇


 エルフの森では族長の一族がいなくなったルミシルヴァの集落を、どのように扱うかで揺れていた。

 また、フェルシルヴァではたびたび人間が来ることから、『人がまた中まで入ってくるのでは?』と不安になる者も出始めた。


「結界がある限りは大丈夫だと言いたいが、まだ侵入されて日も浅い。説得力などないな……」


 しかも、フェルシルヴァでは一時期族長が連れ去られている。余計に不安が強いのだろう。


「いっそ、フェルシルヴァの集落をルミシルヴァまで下げるか?」


 フェルシルヴァとルミシルヴァの位置は近く、ルミシルヴァの方が内側で世界樹に近い。

 集落ごと移動させるなら族長はフェルシルヴァに任せることができる。


「問題は祝福か……」


 なぜか祝福は生まれる場所にも偏りがある。

 フェルシルヴァは木、ルミシルヴァは光。どちらも、その部族にしか現れない祝福を持つ部族だ。


「光の祝福がいなくなった。光の祝福を得る可能性を上げるにはルミシルヴァに多く住まわせるのが良いが……」


 木の祝福もちも多いわけではない。族長の一族を移動させるのは、どちらも失う可能性がある。

 ……祝福が絡む以上、無理強いはできないか……フェルシルヴァの族長に聞くのが一番だな。


 ◇◇◇


「フェルシルヴァの集落をルミシルヴァに、ですか?」


「一つの案として、だがな。決定ではない」


 フェルシルヴァの族長は深く思案してから答えを出す。


「部族の中で、今の集落で過ごすことを不安に感じている者が多い。その者たちを移動させてやりたいとは思いますが……」


 そこで一旦区切って息を吐く。


「……正直、ルミシルヴァで族長としてずっといるのは、勘弁願いたい」


 木の精霊と離れるつもりはないと言う。

 森なのだから木の精霊は至るところにいるはずなのだが、やはり違うらしい。

 それに、今回の騒動の発端はルミシルヴァだ。一番被害のあったフェルシルヴァでは思うところもあるのだろう。


「……わかった。ルミシルヴァの族長については、また各部族長を集めて決めようと思う」


 おそらく、祝福もちの一番多いエルヴァリエルから出すことになるだろう。だが、森の総意として意見は聞かなければならない。


「集落を移りたい者はルミシルヴァへの移動を許可する。ただし、ルミシルヴァの族長が決まるまで部族の結界がない。そのことだけは移動を希望する者へ伝えておいてほしい」


 仮の対策として部族の結界を発動させても良いのだが……各部族の結界の場所は部族内の者しか把握していない。

 知識からあの辺りと予測はできるのだが……族長が新たに決まるのであれば外の者が詳しい場所を把握していることは避けたい。


「……光の娘……やはり一時的にでも戻ってこないだろうか?」


 ……無理だろうな……怒ってたし。


 薬師にルミシルヴァの娘が精霊となったことを話したときに、どうして怒らせたのかわからないと相談したら、散々怒られた。


「相手を思い遣って言葉を選べ、か……」


 ……聞いた後でもどう言えば良かったのか、わからない……

 わからないうちに謝罪するのは、違うのだろうな……

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