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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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113/126

第113話 崩れた信用

 ふらふらとおぼつかない足でダンジョンコアの部屋を出る。


 名前の並んだ画面が頭から離れない。


「一番使わないと……思っていたのに……」


 確かに誰かが使うかもしれないと……

 だから真名を入力するように要求した……

 ……抑止力になれば、と……


 でも、そんなのは関係なかった……


「真名を使ってまで、何をしたかったの……?」


 魔素を使うって、知ってたよね?

 警告も出してる。忘れるはずがない。

 だって、あたしに『あんなものを作ってエルフを滅ぼすつもりか?』って言ったじゃない。


 なのに、何度も、何度も、何度も!


 どんな使い方をしたのかまではわからない。けれど……


「世界樹が弱ったのはダンジョンのせい……」


 あそこにあるのはエルフの森で入手できないものばかりだ。どれを集中的に採取しても魔素をたくさん消費する。


「世界樹が弱ったことで、人が集落にたどり着いたとしたら……そのせいでアイラが人に捕まったとしたら……」


 あたしだ……アイラが精霊になるところにまで追い込んだのは……あたし……


「ダンジョンが……あったから……」


 また並んだ名前が頭に浮かぶ。

 あの中におじい様の名前はなかった。


 信じたい……でも、無理。全てが信じられない。


「ねえ、おじい様……おじい様もダンジョンを使うことを、容認していたの?」


 ダンジョンを使うのなら、なぜあたしを追放したの?

 違うよね? おじい様は……


 追放前のさみしそうな顔が思い出される。


「あれが……演技だったなんて……言わないわよね……?」


 確かめたい。

 今すぐ……おじい様に会って確かめたい。


「……精霊、おじい様の様子ってわからないよね?」


 アイラと違って、精霊との繋がりがない。そこまで大したことはわからないはず……


『いない』


「え?」


 わからないじゃなくて、いない?

 どういうこと?


『ついていた子がいない。祝福もない』


 おじい様の精霊がいない?


「おじい様は精霊の子じゃないの?」


『精霊の子。だけどどこにもいない。帰ってきてない』


 何が起こったのだろう……?

 情報が……足らない……


「……お兄様は?」


『祝福はある。わかるのはそれだけ』


「……そう……どこにいるかは、わからないわよね?」


『詳しい場所はよくわからない。あの子と一緒の場所にいた』


 アイラと一緒にいた? それって、お兄様も人に捕まっている? それとも……自ら協力している?


 心臓がうるさくなる。


 ない。ないわ。それは絶対!


 お兄様がアイラを差し出した。

 そんなことを疑ってしまった自分が嫌だ!


 お兄様は、不器用だけどちゃんとアイラを大事にしていた。

 だから、追放を選んだときも『アイラをお願い』って素直に委ねられた。

 だから……だから、アイラを差し出すなんてことは……!


 名の並んだ画面が心を黒く塗りつぶしていく。


 裏切られた。


 信じられない。


 今まで積み上げてきたもの全てが信じられない。


「誰か……誰か、何があったのか……教えて……」


 エルフの森で何が起きたの?

 エルフの森はいまどうなっているの?

 アイラを捕まえていたのは誰?

 あたしを狙っているのは誰?


 ……ああ、そうだ。これも確かめないと……


「光の精霊。呪いを受けていたのは、アイラ?」


『……あの子と若長』


「そう……」


 なら、調べる前に呪いの対策をきちんと完成させないといけない。

 動き出せば、すぐに狙いはこちらにくる。準備はできる限り整えないと……




 何も手につかない。

 それくらいに気分が落ち込んでいたけど、それでも後継教育だけは止められなかった。この先を考えた結果、今日からは全てレオンハルト様に管理を任せることとする。


「レオンハルト様。質問には答えますし、相談もしていただいて結構です。ですが、基本的には全てお一人でこの地下畑の管理をお願いします」


「はい」


「最初ですからこれだけは……各所からの緊急のことや要望などの連絡方法を考えてください。その方法をしっかりと決められたら、管理者交代のお知らせをしましょうか」


「連絡方法……先生はどのようにされていましたか?」


「あたしは村人たちの前に出られませんから、ミアがトーマスさんたち管理者から要望を聞いてここまで知らせにきています」


 立ち上げ当初の頃は不具合もあって、ミアが走ってくることも多かったけど、今はそんなことはほぼない。だいたい一か月に一度くらいの割合でなんとなく集まって、打ち合わせをしたときに出た要望に対応するくらいだ。


「レオンハルト様が毎日ここに詰めているのは現実的ではありません。もしも緊急で対応しないといけないことが起きたときに、どのように連絡をとるのか。その点だけを決めておくのがいいでしょう」


 あたしがいればあたしが対応したらいい。でも、いつまでもそれでは後継者を育てた意味がないのよ。


「……そうですね。その点は、ここの責任者でもある父上と相談して決めようと思います」


「それがいいですね」


 その他にも引き継ぐにあたって、後々に引っかかりそうなことを例に出し、考えてもらう。多くは辺境伯様や担当者との打ち合わせが必要になるのだけど、そういうことをあらかじめまとめておいてみんなを集めてもらう。管理というのはこれの繰り返しだ。


「この想定が、なかなか思いつかなくて難しいです」


 こればかりは経験だ。最初のうちは誰かから指摘されてから考える。でもそれでかまわないと思う。


「前もって準備している方が楽ですが、その分、想定していないことが起きたときは焦ります。想定してないことが起きたときに焦らず、冷静に対処できることの方が大事です」


 これは地下畑の管理に限ったことではない。領主教育でも似たようなことはしているのではないかしら?


「……そうですね。ここまで具体例を出して考えたことはありませんが……」


 領主と比べると規模は全然違うけど、いい経験にはなるんじゃないかしら?


「今日は決まらなければ動けない事ばかりですし、まずはレオンハルト様が滞在するお部屋を作りましょうか」


「部屋、ですか?」


「地下畑の執務室ですね。いつまでもこの会議室を使うわけにもいきませんよね?」


 長く使えば資料なども置きたいでしょうし、必要だと思いますよ?


「どこに建てて、どういう建物にするのか。部屋を何部屋作って、中はどうするのか。設計してみましょうか」


 さすがに領主教育では建物設計なんてやらないと思うのよね。でも、この地下畑は避難所にもなる。攻められたときには、避難する人数に合わせて建物を増やす可能性がある。

 全体の建物の形や部屋割りと水回りの配置くらいは設計できるようになっていてもらわないとね。

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