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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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108/127

第108話 精霊と呪い

 今日はレオンハルト様が来る日だからダンジョンの情報を確認していると、近くで気配が揺らめく。

 そちらを見るけど、気配を感じるようなものは何もない。


「光の精霊? 何かあった?」


 普段からそばにいるというのに気配など感じさせない。なのに気配を感じるなんて……先日の世界樹のように何かあったのかと勘ぐってしまう。


『……』


「教えて。何かあったのでしょう?」


 押し付けるようにして魔力を渡す。困惑したような気配が伝わり、渋々と話し始めた。


『……光の祝福を受けた子たちが呪われた……』


 呪い? 祝福もちなんてエルフしかいないよね? 呪物なんてエルフの森にあるの?


『呪いの力が伝わってきて……不快……それだけだから心配しないで』


「光の精霊なのに解呪できないの?」


『精霊は呪いに弱い。近づけない』


 んー? あたしにとっては光って呪いに強いイメージしかない。でも、この世界は違うのかな? 死霊や呪いって光でしゅわーっと浄化するイメージしかないのだけど。


『光が呪いに強い……?』


「うーん……あたしの中ではね。呪いって闇の力なのよ。だから強い光を当てることで闇を消すイメージなのよね」


 これで伝わるかはわからないけど、あたしの中ではそんな感じなのよね。

 この世界でもその認識で正しいかわからないし、そもそも呪いが闇じゃないかもしれないけど……呪いなんて日本でもお話の中だけだし、実際に見たことがないものね。


『強い光で……闇を消す……』


 なにかぼんやり光ったり、強く光ったりしている。いろいろ試しているのかな? うまくいくといいね。


 でも、光の祝福を持つエルフって、あたしの知っている限りでは、おじい様とお兄様、アイラしか思い浮かばないのだけど……まさか、あの三人に何かあった?

 光の精霊に聞いたらわかるのだろうけど……いろいろ試している最中だし、最初は話したがらなかったから言わないかもしれないわね。

 ちょっともやっとするけど、急がなければいけないような状況ではないのだろう。


 精霊は呪いに弱い、かぁ……あたしが呪われたら確実に光の精霊にも影響が出そうよね。何か対策を考えておかないといけないかもしれない。


「魔法陣かな」


 魔力を流せば発動する魔法陣なら、あたしか精霊が魔力を流せれば解呪ができる。解呪そのものの陣があった記憶はないから組まなければいけないけど、時間はたっぷりある。それに……


「魔法陣ができたら光の精霊も解呪の仕組みが理解できるかも」


 まだいろいろと試しているらしい光の精霊を見る。魔力の流れがどのように作用するのか一度理解してしまえば、魔法陣がなくても再現して使ってくれそうよね。


 マジックバッグから魔法陣をいくつか引っ張り出す。


「状態異常を取り除くという意味では解毒が一番近いかな……強い光を出すのは、明かり用の光があったはず……」


 あとは光を作用させる先である呪いを定義する陣……さすがに呪いに関する魔法陣はないわね。精霊が呪いに弱いならエルフにも効くだろうし、そんなものは作らないか。

 久しぶりに一からプログラムを考えるような状況に楽しくなってしまう。

 でも、呪いを受けている人は辛いよね。早く組み立ててあげないとね。



 解呪の魔法陣を早く組み立てたくて、レオンハルト様のそばにいても思考がどうしても魔法陣に向いてしまう。


「先生。気になることがあるのでしたらそちらを優先してください。わからないことが出てきたら質問します」


 苦笑を浮かべながらそう提案される。

 レオンハルト様に気を遣わせてしまったわ……でも、そうね。もう一人立ちできるくらいにはタブレット操作板を使いこなしている。

 今は素材部屋の横に新しい場所を増設して、そこで植物を育てたり、気温操作をしたり、成長速度の調整をしたりして、畑管理に必要なことはもう一通りできている。


 いろんなことを想定して触ってもらうことを課題として、あたしは魔法陣の作成に集中することにした。


 ◇◇◇


 セラディアの情報部はヴァルカディアン軍がエルフと小競り合いがあったという場所付近に来ていた。

 森の景色は似たような場所が多く、おそらくこの辺りとしかわからない。護衛についてきている傭兵たちが見つけた、最近大人数で通った跡をたどってきた。しかし、どうも途中で見失い、元の場所に戻ってきているようだ。


 しばらくうろうろとしていたら突然声が響く。


「森はエルフの領域だ! 人間は出ていけ!」


 見回してみるが姿はどこにも見えない。結界の中から声だけを届けているようだ。


「ルミシルヴァの若長と連絡がとりたい! なんとかつないでもらえないだろうか?」


「……エルフをさらっておいて要求するとは、図々しい!」


 苛立ちを含んだ答えが返ってくる。


「ルミシルヴァの若長は人間が連れていった。森にはもういない」


「人間が連れていった……?」


「若長は罪人だからどうでもいい。だが、フェルシルヴァの族長とルミシルヴァの娘は返せ! それができぬなら誰一人、森に入るな!」


 もたらされた情報に衝撃を受ける。

 ルミシルヴァの若長が罪人? 人間がエルフを連れ去っている? ヴァルカディアン軍か? それともまた別の勢力?


 そのまま情報をかみ砕いていたら、どこからともなく矢が飛んでくる。当てるつもりはない位置だが、このままここにいれば攻撃されるだろう。


「これ以上刺激するのは良くない。引いた方がいい」


 傭兵も引くように促してくる。

 そのまま抵抗する気はないと示すように背を向け、森の外へ向かって歩く。


 ここでエルフと接触するのであれば、ヴァルカディアンだろう。これは皇帝からヴァルカディアンに真偽を問いただしてもらわなければならない。

 報告を頭の中で整理しながらエルフの森を後にした。

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