↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
105/127

第105話 アイラ2

 一通り話を聞き、精霊王との繋がりをどのようにしたら得られるか考えていると、遠慮がちに質問される。


「あの……世界樹はどうなったのでしょうか? お母様の魔力が届いてから、周りを把握する余裕がなくて……」


 そうだろうな。あのような大量の魔力が流れたら、私も耐えられるかわからない。


「精霊王を呼んでもらったおかげで世界樹は持ち直した。葉も降っていないし、精霊も戻ってきている」


 安堵した表情を浮かべる。


「よかった。ではルミシルヴァへ戻ってもいいですか?」


 ……ああ、そうだな。その辺りの話もせねばならんか。


「ルミシルヴァへは戻せない」


「……え?」


「今のルミシルヴァは部族の結界がなくなっている。森全体の結界はあるが、守りの薄い場所にお前を置いておくことはできない」


 唯一、精霊王を呼び出せる存在だ。守りは過ぎるほどに万全にしなければならない。


「少なくともルミシルヴァに結界が戻るまではエルヴァリエルにいてもらう」


 今のルミシルヴァには結界の知識を持つものがいない。このままではルミシルヴァの結界が復活することはないだろうがな。


「……おじい様……ルミシルヴァの族長、は?」


「もういない」


「……い、ない?」


「魔素を減らしていた原因を切り離すために、命を代償とする結界を張った。その結界の核になっている以上、戻ることはない」


 ぼろぼろと涙をこぼし、声を上げて泣く。

 たまに「だからあの時……」「ちゃんと聞けば……」などと、嗚咽に混ざって聞こえる。

 薬師が娘に近づき、ゆっくり背中を摩る。


 そのままこちらを睨みつけてくるが……事実なのだから仕方ないだろう。どうしろというのだ……


「若長……ルミシルヴァの若長は……?」


 ああ、あの若長もこの娘と血縁か……


「魔素を減らす原因のものを使っていた罪で拘束している」


「……何を、しているの? あの人……」


 本当にな。

 あの若長の行動だけは、何度聞いても理解できない。

 部族のために、といいつつ魔素を減らすと分かっている迷宮を使うなど……矛盾している。

 世界樹が枯れ始めたのは迷宮が影響した可能性が高いと考えるべきだろう。他に変化したことは、今のところ把握していない。

 それに、世界樹に対応していた時に感じた魔素の流れの変化。あれが迷宮を切り離す結界が展開された時ならば、魔素にかなり影響があったのだと思われる。

 ルミシルヴァに残っている古代遺跡の資料をすべて回収してエルヴァリエルで厳重に管理せねば……


「どう、処分されますか?」


「おそらく追放する」


「……そうですか……」


 世界樹に影響を出し、短い時間とはいえ森全体の結界を消失させるほどのことを起こしたのだ。いくら祝福もちとはいえ、本来なら自死を選ばせるほどの重罪だ。

 だが、ヴェルディエルの集落に来た人間がルミシルヴァの若長との接触を望んで探しているという。そしてフェルシルヴァの族長を連れ去った組織が同じものを求めているのであれば、若長の情報が渡っていると考えるべきだ。

 同じ組織かもしれないが、最悪二つの組織から若長が狙われている。


 ならば、殺してもういないものをいつまでも探られるより、人間に捕らえさせた方が早く片がつく。人間に捕らえられれば、こちらが情報を守る必要もなくなる。

 追放した後、人に若長を見つけさせる方法を考えなければならないが。


 あの若長はフェルシルヴァの族長ほど結界の知識を持っていない。古代遺跡の知識もないらしい。それを信じるのであれば、若長が人に捕らえられたところで追加で情報を与えることはないだろう。


 ルミシルヴァの娘は与えられた情報の大きさに定まらない視線で虚空を見ている。その姿は痛ましいが、いつかは伝えなければならない情報だ。

 この様子ではこれ以上話を続けるのは無理だろう。娘を薬師に任せて後処理の手配へと戻ることにした。



 族長から聞かされた話が、うまく受け止められなくて……どういう感情なのか、自分でもわからない。呆然としていたら、族長が出ていく気配を感じる。

 のろのろとそちらを見ると、族長を見送り、こちらを向く薬師の姿が見えた。


「……ごめんなさい……しばらく……一人にして……」


「わかったわ……何かあったら、すぐに呼んでね」


 軽い音を立てて扉が閉まる。

 静まり返った室内にほっとすると、涙が出て止まらなくなる。


 ……私、泣きたかったのね……


 叫ぶように、声を上げて泣く。

 部屋の外に聞こえるとかどうでもいい。


 世界樹へ向かう前のおじい様の顔を思い出す。

 すべて終わった後だからわかる。どこか寂しそうで、覚悟を決めた顔。あの時すでに、もう会えないとわかっていたのだと……


「どうして……っ! どうしておじい様もお母様も! 残される私に覚悟する時間をくれないの!?」


 悲しみを通り越して怒りがふつふつとわいてくる。

 お母様は別に死に別れたわけではない。ないけども!


「前もってわかっていたなら、少しでも時間を作って話をしてくれてもいいんじゃないの!? そんな突然聞かされて、私がどんな気持ちになるか考えないの!?」


 二人のあまりな別れ方に怒りもわくけど、悲しくて涙も止まらなくて……もう、本当に感情がぐちゃぐちゃだ。何が何だかわからなくなって、自分でももう何を叫んでいるのかわからなくなりつつ、叫び泣き続けた。



 叫びながら泣いたせいか、すぐに疲れて眠ってしまったようだ。

 気がつけば部屋の中は真っ暗になっていた。


 泣いた跡は精霊がきれいにしてくれていた。でも瞼は重たいし、叫んで喉がひりひりと痛む。

 ふとベッドの横にある小机を見ると、飲み物と軽い食事が用意されている。いつの間にかベッドにも入っていたし、静かになったから様子を見に来てくれたのかと思うと、ありがたいものの、今更ながらものすごく恥ずかしい。


「明日にでも、お礼を言わないと……」


 ベッドから出て、ありがたく食事をいただく。

 まだおじい様がいなくなった実感はない。だけど泣いたって戻ってくるわけでもない。受け入れなければ……


「お母様……やっぱり……会えないのはやだよぅ……」


 お互いやりたいことをそれぞれやるんでしょ?

 今の私が一番やりたいことは、おじい様とお母様に会うこと。

 ねえ、どうやったら叶えられるの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。