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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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103/127

第103話 エルヴァリエル族長の苦悩

 バルディウス邸の執務室にノックの音が響き、レオンハルトとセドリックが入ってきた。


「ただいま戻りました」


「ああ、アルセラの様子はどうだった?」


「起き上がるには問題ない程度まで回復したようです。一週間寝ていた影響で筋力が落ちているようで、歩くだけでふらついていましたが……」


「動かないと筋力が戻らないとはいえ、見ていて危なっかしいです」


 話を聞くだけで、周りが心配して手を出そうとしている様が思い描かれる。

 とりあえずは元気そうでよかったというべきか。


「倒れた原因については何か聞き出せたか?」


「魔力を一度に消費したことによる反動だという話でした。その魔力を何に使ったかは……エルフの森に関係していることまでは話していただけましたが、それ以上は濁されました」


 ここからどうやってエルフの森に関わるというのか……方法なんて全く思いつきもしないが、アルセラのやることだからな。何かあるのだろう。


「アルセラが自分から話さない以上、聞いたところではぐらかされるだけだな」


 地下農業迷宮に鍛冶場を作る話が出た時に提案された情報の扱い方を元にすると、秘匿すると決めたことは一切話さないだろう。むしろ、『エルフの森が関係している』と教えてもらえただけでも信頼されていると思うべきだ。


「二人が出かけている間に秘匿文が届いた」


 二人の表情に緊張が走る。


「ドラグナールとエルヴァリエルで小競り合いがあったようだ」


「エルヴァリエル……」


「……タイミング的にアルセラが倒れたことと関係しているのではないかと考えていた」


 そこにアルセラから『エルフの森に関係している』という言葉が得られた。何かしら関連があるのだろう。


「また、無理をされるかもしれませんね」


「そうだな……それに、先のドラグナール戦のときのように一人で抱え込むかもしれん」


 あの時はちょうどクラリッサが慰問に訪れ、動き出す前に対処することができたが……ことエルヴァリエルの話となると、クラリッサでも難しいだろう。


「レオンハルト、この中ではアルセラに接する時間が一番長い。変化を見逃さないよう、注意してやってくれ」


「はい」


 知識も行動も規格外すぎて違和感を拾うのは難しいとは思うが、気にかけているのといないのでは違う。

 次も事が大きくなる前に対処できれば良いが……


 ◇◇◇


 エルヴァリエル部族では族長が頭を悩ませていた。


 世界樹の危機をなんとか乗り越え、魔力の使いすぎで倒れた者たちをエルヴァリエル部族へと運び、介抱していたのだが……


「結界に影響が出るとは思っていたが、一気に起こりすぎだろう……」


 各所から飛び込んでくる報告に考えることを放棄したくなる。

 魔物が入り込んで集落に損害が出たとか、人が集落に辿り着いて追い返したとか、その程度ならまだいい。


 フェルシルヴァの族長が人間に連れ去られた。これは看過できない。

 精霊を盾にとられて自らついていったようだが、族長ともなると結界の知識も、部族間の情報も持っている。

 エルフは長く、結界で侵入を防ぎ、情報を遮断することで守ってきた。

 その外に出さない情報が抜き出された。そう考えるべきだろう。


「世界樹が持ち直したことで結界も戻ったが……奪われた情報から結界に干渉する方法を見つけられたら……」


 エルフは滅ぶ……


 エルフからみても古代から続いてきた結界だ。そう簡単に外から崩せるとは考えにくいが……最悪は考えておくべきだ。だが、最悪を考えたとして対応策が思いつくかといったら、何も思いつかない。


 息を吐き出し、この思考は一旦止める。



 だが、本当に頭が痛いのはルミシルヴァだった。

 こちらは全てすでに起こったことであり、今さら対処など何もできない。


 古代遺跡の知識から『迷宮』を復元させ、それが原因で結界が揺れ、その罪で光の娘を追放。その後、残った『迷宮』を若長が使って魔素を減らし、族長が命を使って、残された迷宮を森の魔素循環から切り離した。


 聞けば族長が全ての責任をとったようにも聞こえる。

 しかし、もうどこから突っ込むべきか……


 あの祝福だけでなく、古代遺跡の知識まで持つ光の娘を森から追放するなど何を考えている!?

 魔素を使うと分かっていて迷宮を使った若長は論外だ。こちらは話しに来たその場で拘束している。処分を決めなければならない。

 ルミシルヴァの族長も森から迷宮を切り離したのは良いが、その結界が解けた後に誰かが迷宮を復活させるとは考えなかったのか!?


「なぜここまで事が大きくなる前に相談しない!?」


 すべてが事後でどうしろというのだ!?

 ルミシルヴァに長の権限があったからか?

 いや、エルフの森全体で部族間が孤立しているのが問題なのか?


「~~っ! とりあえず、ルミシルヴァの娘は確実に保護しなければいけない」


 どうやったのかはわからないが、あの娘が光の精霊王を顕現させることができることは自分の目で確認したことだ。あれがなければ世界樹は枯れていただろう。

 それにあの魔力。ルミシルヴァの娘にはそこまで魔力はなかった。実際に魔力を限界まで出して意識を飛ばし始めるのも早かった。

 精霊王が顕現してから注ぎ込まれていた魔力。あれはおそらく――


「光の娘の魔力」


 追放されている以上、森の外にいるはずだ。光の娘がどのようにして危機を察知して魔力を寄こしたのか……いや、精霊から聞いたのか?

 あれほど強力な祝福だ。魔力を渡して聞くのと同じくらい、はっきりと会話できるのかもしれない。


「これはますますルミシルヴァの娘を保護しなければ……」


 世界樹が枯れかけたすべての原因はルミシルヴァだが、世界樹を救ったのもルミシルヴァだ。あの祝福は継承させなければならない。

 迷宮で魔素を集めていた影響か、いまルミシルヴァの魔素は薄くなり、部族の結界も作用していないという。このまま娘はエルヴァリエルで保護すべきだな。

 その間に、精霊がささやいて精霊の子を宿せば良いのだが……それは望みすぎか……

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