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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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101/125

第101話 フェルシルヴァの族長

 ヴァルカディアン領の執務室で、アルドレウスはフェルシルヴァの族長を確保したという報告を受け取っていた。


「ようやく動いたか」


 全く動きがなかった状況から、なぜ急に確保できる事態となったのかはわからない。影からの報告にも、『突如目の前にエルフの集落が現れた』とある。


 交易の状況の速報から『エルフの森で何かが起きている』という推測はカルヴァスとも一致していた。

 何が起きているのかまではわからなかったが……


 捕らえた族長は表面上は自分の意思でこちらについてきているらしく、道中では身体的な拷問を行わず、会話による尋問を続けていたようだ。

 ただでさえ希少なエルフの情報だ。情報漏洩を防ぐため、報告書には詳しい内容は記されていなかった。確保したエルフがこちらに届くまで待つしかない。


「やっと掴んだ情報だ。有効に活かさねば……」


 エルフの森の中での小競り合いとはいえ、さすがに皇帝の耳に入るだろう。

 突発的な出会いを狙っていただけに、皇帝の許可は得ていない。どのように追及をかわすか。


「……狙っていたとはいえ、今回は本当に突発的なことだ。そのままの報告でかまわないか……」


 条約と皇帝の命令に従い、北方へ軍を分割した。

 その先で魔物の被害が増え始めたから、軍で対応していた。

 軍の警戒行動中にエルフと接触した。


 何の問題もない。むしろ今回の報告よりは、今後の動きが問題だ。


「確保したエルフが鍵となり得るか……可能性はゼロではないだろうが、難しいだろうな……」


 ドゥルガルドの施設そのものの警戒を考えると、あの知識があるならここまでたやすく捕らえられるのは考えにくい。ならば、いかに鍵につながる情報を引き出せるか。

 情報によっては、もう一度エルフとの接触を引き起こす必要がある。

 そこが問題だった。



 エルフ確保の情報から三日後。

 アルドレウスの前には、捕らえられた族長が床に座らされていた。縛られていないが顔色が悪く、全身をぐったりとさせていて力が入らないようだ。


「逃走防止に軽い呪いをかけています。意識があり、会話も可能ですが、解呪しますか?」


 ここまで聞きだした情報を受け取り、軽く目を通しながら思案する。

 情報を見る限り、エルフ全体のことは話すが、防衛に関わることとなると口をつぐむようだ。当然のことであり、想定内だ。


「解呪してやれ」


 聖水をかけてやると呪いの状態が解除されたのか、体に力が入る。まだ呼吸は整わないようだが、こちらを強く睨みつけてきた。


「……これ以上……なんの情報を望む……」


「資源を生み出しているものの情報を」


「資源?」


 眉を寄せ、本当になんのことかわかっていない表情だ。聞き方を少し変える。


「植物を早く育成する。質のよい金属を生み出す。これらにエルフが関わっている」


「……金属……」


「思い当たることがあるなら話せ」


 いぶかしげな表情は変わらないが、何かが引っかかったようだ。


「……そちらが望んでいる情報かはわからないが……ルミシルヴァの若長がインゴットと呼ばれるものを交易に出していたという話は聞いている」


 交易……最近、ルドニア公国に流れているという高品質のインゴットのことだな。


「それをどのように入手しているのかはわからない。その情報を聞いて、すぐにここに来ている。これ以上の情報は持っていない」


 やはり、このエルフは鍵となりえないか。

 だが『ルミシルヴァの若長』という次の可能性は入手できた。

 情報は入手できたが、まだ思い出すこともあるかとさらに角度を変えて質問を繰り返し、軽い拷問も加えるが、本当にこれ以上は知らないようだ。


 ルミシルヴァへの行き方も聞いてみるが、『正確な場所は知らない』と繰り返すばかりだ。エルフが移動するときは特殊な小径を通って行くが、使える者は条件があるらしく我々には使えない。


 続いて、エルフの集落にたどりつけた原因を聞いてみる。

 こちらについては口を閉ざし、一切話そうとはしなかった。影に拷問の強弱を任せて質問を繰り返していく。何度か回復ポーションで傷を治療させ、そろそろ体力の限界かというところでようやく推測を話し始めた。


「……最近……エルフの森全体の魔素が減っていた……おそらく、その影響で結界が消えた……」


 さらに魔素についても質問を重ねるが、もう意識が朦朧としているのか要領を得ない。

 ここまで聞けば、質問の意図は影にも伝わっただろう。一旦休ませることとして、尋問の続きは影に任せることにした。だが、有益な情報はおそらく出てこない。


 今回のようにエルフに接触するためには結界をどうにかする必要がある。結界を支えているのが魔素だという話だが……これ以上の情報があったとして、それで外からどうにかできるのかと言われれば、難しいだろう。

 結界はエルフには影響しない。ならば……


「あのエルフを生かしておいて、ルミシルヴァまで案内させるか……?」


 一見いい方法にも思えるが、移動には小径を使うと言っていた。見えない小径に入られてしまえば、後を追うことはできない。案内させるのは悪手だろう。


 まずは情報を集めるべきだが……あのエルフを人質にルミシルヴァの若長を差し出させる。

 あのエルフにどれだけの価値があり、若長との天秤にかけられるかが不明だ。さらに言うなら、若長が鍵となり得るかはわからない。ただ偶然、施設を入手できて使っているだけの可能性はある。


「エルフの駒は、なんとも動かし難い……」


 どうにも先が読めず、アルドレウスにしては珍しく予測の道筋すら描けずにいた。

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