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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~  作者: 鳥助
第五章

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40.ベルネルゼ商会潜入(1)

「ここがベルネルゼ商会……お、大きいね」


「迷宮都市一番の商会だもん。そりゃあ、大きいよ」


 目の前にあるのは、天高く伸びる建物。何階あるのか数えられないほどに高かった。


「こんなに凄い商会だから、リマの事も大切にしてくれるんじゃない?」


「い、いや……まだ信じられない。だって、やったらいけないことをやってたんだよ。絶対何かあるよ」


「ふむふむ。リマの不安を解消しないといけないみたいだね。じゃあ早速、透過の魔法を使う?」


「……まずは普通に店を見て回ろうと思う」


 まずは表からしっかりと確認する。そのまま扉を開けて中に入ると、綺麗な店内が見えた。そこにはお客さんがたくさんいて、綺麗な身なりの店員もちらほらといる。


「いらっしゃいませ。ごゆっくりとご覧ください」


「は、はい……」


 と思ったらすぐに声をかけられた。びっくりして店員を見てみると、こんな子供なのに笑顔で接客してくれた。


 まだ、これだけじゃ判別つかない。私はそのまま商品を見るふりをして、店の様子を観察した。


 店は大繁盛をしていて、とても賑やかだ。お客さんは好きに商品を見るし、店員は商品を積極的に勧めている。店内は明るい雰囲気が漂っていた。


「へー、思ったよりもいい店じゃない? 店員も優しそうだよ」


「うーん……」


 エルリカはそういうけれど、私には分かる。顔は笑顔だけど、目がどことなく冷たかった。まるで、金づるだとしか思っていないような感じ。


 スラムで暮らしていた時にはそんな目を幾度も見てきた。それと同じような目で見ていたから、良く分かる。


 いつも笑顔で対応してくれるミレナお姉さんの優しさとは大違いだ。店内は明るいけれど、店員が冷たい感じがする。


 そんなところと一緒に働いても大丈夫なんだろうか? もし、その目が自分に向けられると思うと……考えたくない。


「表側はここまででいいよ。裏側を見て来よう」


「分かった」


 私たちはお店を出ると、路地に入りお店の裏側に回った。そこに誰もいないことを確認すると、透過の魔法を自分とエルリカにかける。


 すると、姿が消えた。


「わっ、本当に姿が消えた」


「声は聞こえるね」


「で、でも……エルリカがどこにいるか分からないよ」


「分かりやすいように肩に乗っておくね」


 すると、右肩にずしりと重さが加わった。


「凄い、エルリカは私が見えるの?」


「匂いで分かるからね。リマが不安なら、このまま肩に乗っておくよ」


「うん、お願い」


 これでエルリカが傍にいるって分かるから安心する。そのまま路地を進み、お店の裏口を探した。角を曲がった先、一つの扉を見つけた。


「ここが入口みたいだね。ちょっと、開けてみる」


 探索魔法をかけて、入り口付近の気配を探る。誰もいないことを確認すると、扉を静かに開けた。


 やっぱり、誰もいない。そっと音を出さずに中へと入る。


「潜入、成功だね。これから、どうするの?」


「そうだなぁ……取引の場面とかみたいかも」


「じゃあ、今度は人がいるところを目指そう」


 ベルネルゼ商会を知るためには、どんな取引をしているか見るのが一番だ。探索魔法をかけて、人の気配を探る。すると、あちらこちらに色んな反応があった。


「一つずつ当たって行こう」


 私はその気配を目指して歩き出した。気配を消して廊下を進むと、人の声が聞こえてきた。その声に近づいていくと、それが怒鳴り声だと分かった。


 扉に耳を当ててみると――。


「どうして、売り上げがこれだけしかないんだ! もっと、売り込め!」


「で、ですが……これでも先週よりは」


「先週と比べるな! 今週はもっと売り上げが必要なんだ! どんなことをしても、客に商品を売り込め!」


「は、はい……」


 ……売り上げが少なかったから怒っているような場面だ。もしかして、迷宮都市で一番の商会だけど、売り上げに苦慮しているのかな?


 いや、それよりもあんなに怒鳴る人がいる商会は怖い。納品した商品が少しでも悪いと、簡単に文句を言ってきそうだ。


「なんか、やな場面に出来わしちゃったね。怒られるのは嫌だなー」


「そうだね。理由があったかもしれないけれど、あんな風に怒る人と一緒に働くのは嫌だな……」


 あんな風に頭ごなしに怒られると、萎縮してしまう。スラムでも聞いたような怒鳴り声に身がすくむような思いだ。


 その部屋の扉から離れると、次の気配を探した。階段を登り上に行くと、人の気配がした部屋があった。だけど、声が聞こえない。


 扉に耳を当ててみると、声が小さくて中々聞こえなかった。


「うーん。中で何かをしているようなんだけど……」


「だったら、壁に透過の魔法をかければいいよ。こっちからは透けてみて、相手からは透けて見えないし。あと、音魔法もあったはずだから、それを発動させれば、音が大きく聞こえるよ」


「なるほど、そういう使い方があるんだ。……よし」


 私は壁に向かって透過の魔法を発動させた。すると、壁が透明になり様子が丸わかりだ。何やら瓶詰めをしているようだけど、何をしているのだろうか?


 音魔法を発動させて、音を大きくしてみる。


「……本当にいいのかな。薬を水で薄めてかさ増しするなんて」


「でも、上の命令だから仕方ないだろう。錬金術師が納品する薬が少ないせいなんだから……」


「もっと作らせればいいのに。俺たちのように馬車馬のようにな」


「どいつもこいつも体を壊しているらしいぜ、薬の作りすぎで。全く、錬金術師は虚弱だな」


 その話を聞いて、体が固まった。薬を薄めている事、そして錬金術師が酷使されているかもしれないという事。


 迷宮都市一番の商会なのに、悪い話を聞いてしまった。これは、危ない匂いがする。


「なんか、一気にイメージが悪くなったね」


「……うん。取引の場面がどんな風なのか確認しないと」


 私たちは魔法を解除すると、他の気配を探って建物の中を歩き出した。

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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~
― 新着の感想 ―
 普通に客として入った時に、商品に鑑定をかけてみていれば、もっと情報を得られたと思う。
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