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第4話 2人のデート二日目―映画館―

デート二日目、映画館。


「…楽しかった?」

「うん…かなり…」

「恋愛映画だったのに?」

「うん…恋愛映画は初めて見たけど…存外学びが多いと感心したよ!」

海の問い掛けに、ナツキは恥ずかしげもなく答えた。

それは対人指南書には載ってない本心だった。


ここはSEIHOシネマズ立川から数分歩いた先、喫茶モコモコ。


これから始まるのは一つの戦い、感想戦である。


「まず、主人公のタケル

類い稀な才能の持ち主だ」

「うんうん!俳優さんは縦浜光星くん!

多才だよねぇ…」

「そう、まさに多才だ

冒頭、駅での立ち姿

身に纏った筋肉が作り出す安定した動きでスマートフォンを取り出していた

さらに道行く人の顔を次々に映したカメラワーク

あれはタケルが自分の顔を見た可能性がある通行人を確認していたことを表現しているはずだ」

「あの駅って近くに定番のデートスポットがいくつもあるんだよね

タケルはなんで一人で居たんだろ?

あ、でもさすがに一人のわけないよね

誰か待ってたはずだよね

あの後すぐに、ミチコ役の入口冬希ちゃんとの出会いになるからもうドキドキ!

そんで持ってるタピオカのクリームすごすぎ!

冬希ちゃんの顔よりデカくてヤバ!って思ったらおじさんの首にひっくり返してびっしゃびしゃになってさ!

あー!もー!おこるー!って思ったらおじさん泣きそうな顔になるし!」

「あのタピオカの動き…

スローモーションになっていたのはタケルの動体視力が…」


「お、お待たせしましたぁ…」

ナツキがふと顔を上げると眉をひそめたウェイターが、お盆からアイスコーヒーとポットとカップをテーブルに置いた。


「紅茶は1分蒸らしてから飲んでください!」

そう残し、ウェイターは足早に立ち去った。


間を外された…

ナツキは言葉に詰まった。

すかさず海が差し返す。


「あのさ!

ミチコの病気…悲しいよね…

さっきまで友達としゃべってたのに急に吐血して、

私びっくりしちゃった…

その後の余命宣告のところでもう号泣!

もうどろどろだよぉ…

茶色くなったティッシュ見たら、化粧直さなきゃってなったけど…」

「確かにあの病気は驚愕だ

あの量の出血だ

当然本人にしかわからない前兆、痛みがあったはず

それをおくびにも出さない胆力は驚嘆に値する

さらに、病気に関してタケルは間違いなく感付いていた

気付いているが、気付いていることを気付かせない

これはプロとして常に心がける必要がある

彼はミチコを、視聴者を、完全に騙しきって見せた」

「でもでもでも!

最後治って本当によかった!

ミチコ…ホントによかった…」

「そうだな、タケルの助けを求める言葉の直後、後ろから現れた黒人医師ジョニー

彼はタスケルヨの一言を発するまで完全に気配を消していた

あのシーンに至るまでの約1時間、常に死角から監視を続けていたはずだが、気が付いた者は一人も現れなかった事実は異常性を証明している」

「うぅわぁあーん!

思い出したらまた泣けるー!

あのシーン間違いなく映画史に残るよね!

助けてくださいよー!タスケルヨ!

そしてジョニーが乗る飛行機を見送ったタケルが振り返るとそこには…

病院で死んだはずのミチコ…!

ミチコ!って叫ぶタケル!

そして車椅子を蹴飛ばして駆け寄るミチコ…

抱き止めてキスを送るタケル…

ああー!もう!さいこー!」


アイスコーヒーは氷が溶け、黒と透明のコントラストを作る。

冷めた紅茶は渋く、海の口をすぼませた。

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