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普通のふりをしていた

幼い頃から続いていた違和感は、小学生になっても消えることはありませんでした。

小学生になった。

新しい環境で、今度こそ普通に過ごせるかもしれないと思っていた。

でも――

現実は、やっぱり同じだった。

プールの時間。

みんなが水着に着替えて、楽しそうに外へ向かっていく。

その流れの中で、

僕だけが教室に残っていた。

外から、水の音と笑い声が聞こえてくる。

その全部が、少しだけ遠く感じた。

「いいなぁ」

そう思ったけど、口には出さなかった。

出しても、どうにもならないって分かっていたから。

しばらくして、みんなが戻ってきた。

髪を濡らして、楽しそうに笑っていた。

「〇〇君も入ればよかったのに!」

「冷たくて気持ちよかった〜笑笑」

悪気のない言葉だった。

だからこそ、何も言えなかった。

「うん」

そう答えて、少しだけ笑った。

本当は、入りたかった。

同じように笑いたかった。

でも、それはできなかった。

身体測定の時間。

みんなが靴下を脱いで、順番に保健室へ向かっていく。

僕も同じように脱ごうとした。

でも――

靴下が、足の傷にくっついていた。

ゆっくり引っ張ると、

かさぶたが一緒にめくれて、痛みが走った。

「……っ」

声を出さないように、息を止めた。

もう一度やろうとして、手が止まった。

痛いのは分かっていた。

それでも、脱がなきゃいけない。

周りは、もう終わっている。

僕だけが、取り残されていた。

結局、ひとりでは脱げなかった。

みんなに見られながら、

先生に手伝ってもらった。

「ごめんね、ちょっと我慢してね」

そう言われて、靴下を引っ張られるたびに、

小さな痛みが何度も走った。

周りの視線が、全部自分に集まっている気がした。

早く終わってほしかった。

それだけを、ずっと考えていた。

給食の時間。

みんなには、箱に詰められたご飯が配られていた。

でも僕の前に置かれたのは、

母が届けてくれた白いご飯だった。

体のことを考えて、

食べられるものだけを用意してくれた。

分かっていた。

それが自分のためだってことも。

でも――

「それ、なに?」

そう聞かれて、

「普通のご飯だよ」って答えた。

本当は、普通じゃなかったけど。

ただ、同じに見せたかっただけだった。

表面では、明るく振る舞っていた。

できるだけ普通に見えるように、

フレンドリーに、笑っていた。

でも――

本当の自分は、まったく違った。

心の中は、

まるで漆黒の闇みたいで。

誰とも、話したくなかった。

何を言っても、

どうせ分かってもらえない気がしていた。

だから、話さなかった。

ただ、表面だけを取り繕って、

その場をやり過ごしていた。

あの頃の僕は、

ずっと、ひとりだと思っていた。

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