見せたくなかった自分
気づけば、自分を隠すことが当たり前になっていました。
中学生になった。
体も、環境も、少しずつ変わっていく中で、
ひとつだけ、変わらないものがあった。
自分の体のことだった。
小学生の頃よりも、
周りの目が気になるようになった。
見られたくなかった。
触れられたくなかった。
でも――
普通でいたかった。
かゆみは、さらに強くなっていた。
我慢しているつもりでも、
気づけば手が動いていた。
掻いてはいけないと分かっているのに、
やめられなかった。
ある日、鏡の前で違和感に気づいた。
髪の一部が、薄くなっていた。
最初は気のせいだと思った。
でも、それは少しずつ広がっていった。
無意識のうちに、
髪を触っていたこと。
抜いてしまっていたこと。
気づかないふりをしていただけだった。
気づけば、
頭に包帯を巻くようになっていた。
ぐるぐると、何重にも。
傷を守るためでもあり、
髪の毛を、これ以上抜かないためでもあった。
それでも――
鏡に映る自分は、
どこか「普通」から外れていた。
学校に行けば、視線を感じた。
「それ、大丈夫?」
そう聞かれて、
「うん」と答えた。
本当は、大丈夫じゃなかった。
体育の時間。
更衣室で、みんなが制服を脱いでいく。
当たり前の光景の中で、
自分だけが、そこにうまく馴染めなかった。
見られたくなかった。
肌も、傷も、
そして、頭のことも。
できるだけ目立たないように、
急いで着替えようとした。
でも――
「あれ?」
小さな声が聞こえた。
「ここ、ちょっと薄くない?」
体が、固まった。
いつか気づかれるとは思っていた。
それでも、
実際に言葉にされると、何も言えなかった。
「あー、うん。ちょっとね」
そう言って、笑った。
何でもないふりをした。
本当は、何でもなくなかった。
それから、
できるだけ人と深く関わらないようにした。
話しかけられれば答える。
笑うこともできる。
でも、それ以上は踏み込ませなかった。
見せたくないものが、
増えていったから。
隠すことばかりが、上手くなっていった。
気づけば、
本当の自分が、どんなだったのかも、
分からなくなっていた。
鏡に映る自分を見ても、
それが自分なのかどうか、
うまく分からなかった。
それでも――
学校には行って、
普通のふりをして、
何事もないように過ごしていた。
それが、一番楽な生き方だったから。
あの頃の僕は、
誰にも触れられたくなかった。
でも――
本当は、
誰かに気づいてほしかったのかもしれない。
言葉にすることは、最後までできなかったけど。
あのときの自分は、
きっとずっと、
何かを待っていた。




