5章 第4話 武術の町4
狩人のシン、薬師のミカ、華奢だが力強いカレン。
三人は王都に向かう。
村を襲った災いの正体を明らかにするために。
解放奴隷の拳闘士ユウ。
盗賊団で育ったフミ。
それぞれの運命が交わり、物語は新たに動き始めた。
「なあ……。ユウ、少し話いいか?」
「フミか。構わんよ」
フミも石畳に座った。
祭りの喧騒から離れて、涼やかな風が流れる。
「今日はすごかったな。長い剣を相手にしてよ」
「紙一重だよ。どう転んでいたか分からん」
ユウが穏やかに微笑んだ。
「ユウは腕に着けた防具をほとんど使わなかったな。何でだ?」
「あれは拳の保護の為につけている。防御に使うのは、いざという時だけだ。
相手の攻撃は、できるだけ避ける」
「なんで?」
フミが身を乗り出す。
「俺は、お前くらいの年から、大人と試合をしていてな。
まともに防御して受け止めると、力でやられてしまう……。
だから、当てさせず当てる戦い方を目指した」
(力で勝る相手の攻撃はまともに受けるな。躱すか、逸らすんだ)
フミの頭のなかにシンの言葉が浮かんだ。
「自分だけ当てるなんて、できるのかよ?」
ユウはフミに目を向けた。
「そうする為に、どうするとよいと思う?」
「スピードか? 自分の攻撃だけ当てて、すぐに離れる」
手振り身振りを交えるフミ。
「それもある。
だが、俺は眼の良さも重要だと思っている。
身体だけ速く動いても、相手の動きへの反応が鈍ければ意味はない」
(体格で勝る相手と戦うために、スピードと眼を鍛えること)
フミは心に刻み込んだ。
「少し飲みすぎちまった……。
また、何か分からないことがあれば聞いてこい」
ユウは少し頬を緩めてフミを見た。
「おお、ありがとうよ。これからの俺に期待してくれ」
「うむ。早く寝ろよ」
ユウは立ち上がり、宿に帰って行った。
◇
祭りの夜は、穏やかに更けていった。
——少なくとも、街の人々にはそう見えていた。
その頃、教会の安置所の扉の前に、衛兵が立っていた。
突如、衛兵の背後から手が伸びた。
「かっ……。」
衛兵は首を切られ、膝から崩れ落ち、 動かなくなった。
物影から人影が姿を現して、足音も無く安置所に入り込んだ。
闇のなか、ほのかに火を灯したロウソクが揺れる。
侵入者は、テーブルの上に置かれた、小さな箱を開いた。
そこには、遺物が収められていた。
規則正しく幾重にも走る細かな筋。枝分かれした線は円や菱形を描く。
あまり目にしないその模様を、ロウソクの灯りが淡く浮かび上がらせていた。




