幼少編 3
プロローグの鈴菜と性格や口調が変わってきているのは、ギルフォードとして生きてく事にしたからと天使のせいでひねくれたからです。
「あいにく当主様が不在ですが、緊急時につきアルフォンス家に使えるものだけで話し合いの場を設けさせて頂きました」
自室爆発事件から1日たった。現在ギルフォードは初めて入る部屋で大量の大人達に囲まれている。
予定されていた人数が揃ったのだろう、卓を挟んだ目の前で白髪混じりのおじさんがメガネを押し上げ皆を見渡した。執事長メリヤスだ。あまり普段見かけることは無いが、当主不在の屋敷の切り盛りに毎日忙しいらしい。メガネの奥にクマ発見。御愁傷様です。
「――皆が知っての通り昨日ギルフォード様の魔力が暴走しました。当主様には緊急の早馬を出しましたが、早くて到着まで2週間はかかる予定です。魔力の暴走はすぐに対処しなくては大変危険です。往復の日数を考え皆で至急対処方法を話し合って頂きましょう」
執事長が緊急会議開催宣言を重々しく皆に伝える。
執事長の右にメイド長、左にナイフ振り回していた姿が記憶に新しいコック長。コック長の隣のメイドさんは書記係なのか紙の上で筆記具をしきりに動かしている。他にもメイドさんや執事さん、門番にコック、果ては庭師さんまでもが参加しているので円卓に並んだ20人分の椅子は埋まりきり、壁際にずらっと並んでいる状態だ。
全員が知った顔の中、一人だけ知らない顔が混じっている。
壁際、入り口の扉前に立つ10代後半の細身の男だ。入るなり勧められた円卓内の椅子を断り腕を組み閉じられた扉にもたれ掛かった。門番に似た軍服のような服を着て、短く刈り上げた髪は深い赤色だ。
この世界の人間は金髪や茶髪に似た色が多いので赤は始めてみる色だ。門番より男の服の方が金の刺繍など幾分派手さがあり、腰には長剣を射している。じっと見つめていたら視線が合いニヤリと笑われた。
なんとなく関わり合いたくない男だ。
かくゆうギルフォードはメイドさんの膝の上にいた。丁度執事長の目の前で、部屋の一番奥にあたる位置で皆を見渡せる。
そもそも何故こんな会議をしているかというと、アルフォンス家は代々メイドや執事など屋敷内で働く人達に起こった問題を全員で意見を出しあい当主もまじり一致団結して解決してきたらしい。
今回は当主不在の中、最善策を探すため緊急にギルフォードについての話し合いをすることになったとか。
メイド長が手を挙げ、執事長の了解を得て口を開いた。
「魔力とは早くても5歳から貯まっていくもので、1歳児では無いに等しいはず。本当にあの爆発は魔力暴走事態によるものなのでしょうか」
「確かに、その通りですね。疑問に思われるのも仕方ない……」
執事長が頷き答える。
「……しかし部屋の壁は内から外に壊されています。爆発前に壁に向かって腕を伸ばすギルフォード様をメイドの1人が目撃、さらに魔術が使われた形跡も部屋にあった。国家魔術師殿に来ていただき確認したのだから確かなことでしょう。ですよね? 魔術師殿」
執事長の視線の先は扉にもたれ掛かる赤髪男。国家魔術師とは国家お抱えの魔術師という所だろうか。
「ああ、壁にも部屋にも満ちてたぜぇ、上質な魔力がな」
「しかし、ギルフォード様とは限りません! よもや何者かに狙われたのでは」
メイドさんの一人が声を張り上げると周りもそうだそうだと賛同しだした。もしや暗殺?と物騒な声も聞こえる。
(ただの興味本意がどんどん大事になっていく……)
どんな罠だ、このやろう。
普通ではない全ては天使の融通だとしたら全てが方をつくのだが、それを説明をするわけにもいかない。
心底思うが、普通に転生したかった。いらぬお節介が多すぎるのだ。出る杭は打たれるという諺を是非教えてやりたい。耳を引っ張りながら教えてやりたい。頬を引っ張りつねり上げながら教えてやりたい!
と、現実逃避をしていたら、赤髪男が見つめてくる視線がかなり熱心なことに気付いた。何が楽しいのかニヤニヤとずっとギルフォードを見ているのだ。大丈夫だろうか、この男。せっかくかっこいい顔をしているのに残念男かもしれない。
目が合うといっそうニヤーと笑い口を開いた。
「とりあえず黙って聞けや、おまえら。100%犯人はそこの坊主に間違いない。インギール神に誓ってもいいね」
ギルフォードをあごで指しつつの発言に、魔術師が潜んでいたかもしれないと論議していた面目が押し黙った。
半数ほどが赤髪男が坊主と行った途端眉を潜め、半数が純粋に驚き困惑している。
「部屋に残っていた残留魔力と今こいつからびしびしと感じる魔力が一緒だ。知っての通り魔力は種類と質と量があってなぁ、人それぞれ違うわけだが……」
かつかつとブーツを響かせ赤髪男がすぐ横まで来た。自然と目が合う。
「こいつ、本当に人間かぁ? 竜族や魔族とか言われた方がしっくりくるぜ」
(うっわぁ)
やはり魔力量などが普通ではないのだろう。思わず目をそらす。
「まず種類だが、感じたことねぇ魔術の波動だ。光属性が強い気もするが何とも言えないな。それだけじゃない、質と量もおかしい。身体に収まりきらないのか、魔力が圧縮されているイメージだな。見るやつが見たら目を疑うだろうよ」
口は笑ったままどこか眩しそうに目を細める赤髪の魔術師。
誰かがごくりと喉を鳴らした。
「早く制御してやるのが一番だと思うぜ。圧縮された魔力が爆発したらどうなるか、俺にも解らねぇ」
くしゃと頭を撫でられた。今ダメになったら楽しくねぇしなと小声で呟く。バッチリ聞こえてますから、お兄さん。
「し、しかし魔力制御アイテムをこんな子供に付けるなんて……!」
若いメイドさんが悲鳴混じりに呟くと、年長のメイドさんも頷いた。
「そうですね。普通魔力が高い子供は5歳から魔力を作りだし、10歳で最高値に達しあとは上昇するとしても緩やかになるとか。その間に暴走しないよう魔力制御アイテムを付けて基礎を勉強し12~15歳程で取り外すと聞きます。魔力制御アイテムの身体への影響率はその年頃を元に作られたもの。ギルフォード様が付けられてもし異常が起きたら大変です」
「坊主の魔力を暴走させたら影響所の話じゃねぇよ。この屋敷全体消滅もありえるな。ま、仲良く死にたいならご自由に放置してあーだこーだと永遠話し合っとけばいいさ」
赤髪男が鼻で笑い、踵を返し扉へと戻って行く。
「そんな知的な目を持った幼児見たことねぇしな、何だか俺たちの話しも理解しているみたいじゃねえか。規格外幼児なら大丈夫なんじゃないか? 合う魔力制御装置を早く見つけてやるんだな」
保障はできねぇが。好きにやれよ。そう呟き扉の取手に手をかける。
「俺も暇じゃねぇ、報告もかねて一度軍に帰らせてもらう。あ、そうだ、坊主」
ふいに扉を開く手を止め振り返った。ギルフォードは条件反射でギクッと肩を揺らす。
慌てて何も解っていない無邪気な顔を取り繕ったが笑われただけだった。
「将来国家魔術師になるなら貴族ばかりのひょっこ1番隊じゃなく、俺たちの荒くれ実力派の4番隊へ入隊することをオススメするぜ。お前ならいつでも歓迎だ」
その頃には俺は部隊長とかしてるかもな~と陽気に笑って扉を閉め赤髪男は去っていった。
なるほど、国家とつくお堅そうな職業についているわりに口が悪いのは平民出の癖のある集団からたまたま派遣されてきたのだろう。
国家魔術師4番隊には赤い毛質の洞察力の優れた怖いチェシャ猫がいる。これは覚えておこう。
側にいたらどんどん暴かれるに違いない。