第五話 割れるなら腹筋がいい 別れるなら脂肪とがいい ①
貴族が多く通う王立学園、エリザベスも例にもれず通っていた。
昨年度、生徒会長をしていたデヴィットからのバトンを受け継ぎ、生徒会長をつとめている。
「エリザベス様、おはようございます! 今日の放課後の生徒会の予定です!」
「ごきげんよう。いつもありがとう。助かるわ」
「いえ! これくらい、生徒会書記として当然です!」
「エリザベス様! 今日のランチのご予定は」
「今日は騎士クラブの方たちと筋トレランチミーティングですの。よろしければあなたもいかが?」
「ぜひ! ご一緒させてください! ……筋トレ?」
「今回の議題は、良質なたんぱく質についてですわ。よろしくね?」
後輩たちの羨望のまなざしを受けながらエリザベスはマイペースに学生生活を謳歌している。
「最近ますますお美しくなられた」
「立ち姿が凛として、おとぎ話の王子さまのようにも見えますわ」
エリザベスの些細な変化も見逃さない彼らにとって、筋トレを始めたエリザベスの容姿の変化ももっぱらの噂だった。彼女への賞賛を口にするとともに、なぜそうなったのかなどという下世話な話題も一緒に語られた。
「自分を振り返るいいきっかけがありましたの」
エリザベスは、変わったきっかけを問われると微笑んでそう答えた。
こういわれれば“力がないといわれたことを、そのまま筋肉がないととらえて筋トレをしている”とは誰も思わない。
「エリザベス様は悲しい出来事があり、それを忘れるためトレーニングに励んでいる」
いつの間にかそう解釈され、広がっているが、エリザベス本人もそう勘違いされているとも思っていない。
「どうやら、殿下と決別したらしい」
「え!? どういうこと!?」
「殿下がエリザベス様を拒絶したとかなんとか」
「去年はあんなに仲睦まじかったのに!」
「それでもエリザベス様は対話を続けようと……」
学生の話は時間経過とともに尾ひれだけじゃなく令嬢のドレスに重ねるレースくらいに着ぶくれていく。
『王太子殿下とエリザベス様は婚約破棄されるらしい』
噂話がここまで形を変えるまでそう時間はかからなかった。




