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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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砂糖の配給

「誠殿ー!」


「ん?」


ぐつぐつ。

鍋の中では、野苺と砂糖が煮込まれている。


「タタか……」


「やっぱり、そうなってましたか……」


「だな」


俺は鍋をかき混ぜる。


「昨日より大量に作ってる」


「でしょうね……」


タタが鍋を覗き込む。


「これはジャムですか?」


「ああ。作り方も簡単だからな」


「レシピは……」


タタが俺の横に置いてある紙を見る。


「ふむふむ……」


しばらく読み込む。


「それほど難しくはないですね!」


「だろ?」


「それならば!」


「それならば?」


タタが勢いよく顔を上げる。


「町人の全ての方に、最初は平等に砂糖をお渡ししましょう!」


「……」


「随分と太っ腹だな」


「はい!」


タタは自信満々だ。


「まずは、全員に同じ量をお渡しします!」


「それでいいのか?」


「はい!」


「砂糖って、かなり高価なんだろ?」


「もちろんです!」


「それを全員に?」


「はい!」


タタは頷く。


「一部の方だけが使える状態にするより、町全体に広めた方が良いと思います!」


「なるほど」


「平等にお渡しすれば、不満も出にくいでしょう」


「確かにな」


『合理的な判断です』


「アイもそう思うか?」


『はい』


『現在は砂糖の価値を村人の多くが把握していません』


「うん」


『そこで一部の人だけに配布すると、砂糖を巡る問題が発生する可能性があります』


「なら、最初から全員に配る」


『その方が安全です』


「なるほどな」


タタがさらに続ける。


「そして、砂糖の使い方も一緒に伝えます!」


「ジャムみたいな?」


「はい!」


「それなら、俺が作り方を教えればいいか」


「それもお願いします!」


「分かった!作り方も簡単だしな」


『果物と砂糖があれば、比較的簡単に作れます』


「だよな」


タタが嬉しそうに笑う。


「そして――」


「まだ何かあるのか?」


「はい!」


「砂糖を配れば、町人の皆さんが自分で色々と作り始めるかもしれません!」


「あー」


俺も納得する。


「なるほどな」


「はい!」


「新しい商品が町人から出てくるかもしれないってことか」


「その通りです!」


『非常に興味深い流れです』


「俺が全部考えなくてもよくなるな」


『はい』


「砂糖を使った料理やお菓子を、町人が自分で考える」


『その可能性があります』


「そうなれば、食べ物の種類も増える」


『はい』


「それを売れば、新しい商売にもなる」


「その通りです!」


タタの目が輝く。


「そして、町の収入が――」


「また金の話か?」


「いえ!」


「今、言おうとしただろ」


「皆さんが豊かになるのです!」


『誠様』


「分かってる」


『タタ様は非常に嬉しそうです』


「だよな……」


タタはもう完全に先のことまで考えているようだ。


「それに――」


タタが真剣な顔になる。


「砂糖を使うことで、今まで食べていた物も変わるかもしれません」


「確かにな」


「ジャムだけではありません」


「お菓子とか?」


「はい」


「飲み物とかも?」


「そうです!」


『食文化そのものが変化する可能性があります』


「……」


俺は鍋の中を見る。

ぐつぐつ。

甘い香りが漂っている。


「砂糖一つで、そんなに変わるのか」


『生活に余裕が生まれたことで、今まで必要とされなかった物の価値が生まれています』


「なるほどな。生きるために食べる。それだけじゃなくて――」


『美味しいから食べる』


「そういうことか」


タタが頷く。


「だからこそ、まずは皆さんに砂糖を知ってもらうのです!」


「分かった。全員に平等に配ろう」


「はい!」


「ただし――」


「はい?」


「使い過ぎないように伝えてくれよ」


「もちろんです!」


『砂糖は高価ですので』


「だよな」


タタが笑顔で頷く。


「では、早速準備します!」


「もう行くのか?」


「はい!」


「相変わらず早いな……」


「善は急げです!」


タタはそのまま走っていった。


「……」


『誠様』


「何だ?」


『砂糖が町全体へ広がります』


「だな」


『今後、どのような物が生まれるか楽しみです』


「俺も楽しみだよ」


俺は鍋をかき混ぜる。


「でも――」


『はい』


「ジャムくらいは、俺が作らなくてもいいようにしたいな」


『それは同感です』


「だよな」


遠くからタタの声が聞こえてくる。


「砂糖の配布準備をお願いします!各家庭の人数を確認してください!平等にですよ!」


「……」


「もう始まってるな」


『はい』


こうして、砂糖は一部の特別な物ではなく――町人全員が使える物として、少しずつ村の生活へ入り込んでいくことになった。

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