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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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ジャムの噂

「よし」


完成したジャムを小瓶に分ける。


「これを、手伝ってくれた子供たちの家に持っていくか」


『はい』


俺は子供たちの家を一軒ずつ回った。


「これ、この前集めてもらった野苺で作ったジャム」


「ジャム?」


「パンに塗って食べるんだ」


「こう?」


「そうそう」


親御さんにも食べ方を説明する。


「薄く塗ってもいいし、好きな量で食べていい」


「なるほど……」


「甘いから、子供たちも喜ぶと思う」


「ありがとうございます」


「いやいや。材料を集めてもらったからな」


「子供も喜びます」


「なら良かった」


これで、ジャムを食べてもらえるだろう。

俺はそう思っていた。



次の日。


「なっ!?」


朝から家の外が騒がしい。


「誠にいちゃーん!」


「ん?」


「野苺獲ってきたよ!」


「ぼくもー!」


「わたしもー!」


「……」


俺は目の前に集まった子供たちを見る。

手には――籠。

そして、その中には大量の野苺。


「……」


「お前ら、どうした?」


「ジャム作って!」


「私も!」


「僕も!」


「昨日の美味しかった!」


「もっと食べたい!」


「……」


俺は頭を抱える。


「なるほどな……」


『噂が広がった模様です』


「だよな……」


『「野苺を持っていくと、誠様がジャムを作ってくれる」という情報が、子供たちの間で共有されたと思われます』


「完全に広まってるじゃねーか」


「誠にいちゃん!」


「ん?」


「これもジャムにして!」


「こっちも!」


「いっぱいあるよ!」


「……」


俺は籠を見る。

昨日より多い。


「分かった!」


「出来たら家に持って行ってあげるから!」


「はーい!」


「ありがとう!」


「いっぱい作ってね!」


子供たちは嬉しそうに走っていく。


「……」


俺はその背中を見る。


「なんだか、仕事が増えたな」


『人気商品になったようです』


「まだ一日しか経ってないぞ?」


『子供たちの情報伝達速度は非常に速いようです』


「確かにな……」



俺は集められた野苺を見る。


「これ、全部ジャムにするのか?」


『はい』


「昨日より多いぞ」


『需要が増加しています』


「ジャムが売れてるわけじゃないのに、需要だけ増えていくのか」


『現状では、誠様が無償で提供しております』


「……」


「そうだったな」


『今後、継続して製造する場合は、方法を考える必要があります』


「確かに。毎日俺が作って、毎日配るってわけにもいかない」


『はい』


「子供たちが自分で作るのは難しいし」


『保護者の方々であれば可能と思われます』


「なら――」


俺は少し考える。


「作り方を教えればいいか」


『はい』


「子供たちが集める。大人がジャムを作る。必要なら砂糖を販売する」


『その方が持続可能です』


「なるほど。俺が全部作るんじゃなくて、作れる人を増やす」


『その通りです』


「また同じだな」


『はい』


「最初は俺が作る」


「その後、他の人に教える」


『合理的です』


俺は笑う。


「これでジャムも村の中に広がっていくわけか」


『はい』


「砂糖がある。果物がある。そして作り方がある」


「……」


「意外と簡単に新しい食文化って生まれるんだな」


『生活に余裕が生まれたからこそ可能になったものと思われます』


「そうだな」


俺は再び鍋を用意する。


「よし。今日は昨日より大量に作るぞ」


『はい』


「でも――」


俺は集まった野苺を見る。


「次は誰かに作り方を教える」


『それがよろしいと思います』


「俺がジャム屋になる前にな」


『賛成します』


外から、子供たちの声が聞こえる。


「誠にいちゃーん!」


「ジャムまだー?」


「今作ってる!」


「はーい!」


俺は苦笑しながら、鍋に野苺を入れていく。

こうして、ジャムは誠の予想以上の速さで村に広がり始めた。


そして同時に――


「野苺を持っていけば、ジャムになる」


という、新たな噂まで町中に広がっていくことになった。

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