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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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初めての甘味

「誠殿!」


「ん?」


振り返ると、タタがこちらへ走ってきた。


「タタ。どうした?」


「例の物の在庫が貯まりましたので、何かメニューを考えておいてください!」


「もうそんなに貯まったのか?」


「はい!」


タタは満面の笑みだ。


「恐らく、町内への供給は全く問題ないと思います!」


「それは良かったな」


「ですので、一袋置いていきます!」


タタが砂糖の入った袋を置く。


「分かった」


「お願いしますね!」


「おい、待――」


俺が声を掛けるより早く、タタは走り去っていった。


「……」


「相変わらず忙しいな」


『はい』


俺は置かれた袋を見る。


「なあ、アイ」


『はい』


「どんなメニューがいいんだ?」


『そうですね。まずは、「甘い物が作れるようになった」という認識程度でよいと思います』


「なるほど」


『ですので、ジャムなどはいかがでしょうか?』


「あー、ジャムか」


『はい』


『パンは既にありますので、そこへ甘い物を塗るというだけでも、食事のレパートリーが増えます』


「確かに。パンにジャムを塗るだけなら、受け入れるのも簡単そうだな」


『はい』


『それに――』


「ん?」


『誠様でも簡単に作れます』


「……」


「またその言い方」


『事実です』


「はいはい」



「果物なら……」


今の時期なら、山や野原にいくつかある。


「無難なのは、野苺みたいなのでいいか?」


『はい。理想的です』


「それなら、町の子供たちに集めてもらうか」


『はい』


「お願いしてくる」


『その際、ちゃんとお駄賃を渡してください』


「分かってるよ」


俺は町の子供たちを集めた。


「野苺みたいな赤い実を集めてきてくれないか?」


「何に使うの?」


「新しい食べ物を作るんだ」


「美味しい?」


「たぶんな」


「じゃあ、集める!」


「ただし――ちゃんと集めてきてくれたら、お駄賃を払う」


「本当!?」


「本当だ」


「分かった!」


子供たちは一斉に走っていった。


『良い方法です』


「子供たちも喜ぶしな」



数時間後。


「ただいまー!」


「持ってきた!」


「いっぱいあるよ!」


子供たちが次々と戻ってくる。


「おお……」


籠いっぱいの野苺。


「こんなに集まったのか」


『十分な量です』


「よし」


俺は約束通り、一人ずつお駄賃を渡す。


「ありがとう!」


「また集めていい?」


「いいぞ」


「やった!」


子供たちは嬉しそうに帰っていく。


「さて……」


俺は籠を見る。


「これをジャムにする」


『はい』



まずは野苺のような実を水で綺麗に洗う。

傷んでいる物を取り除く。


「よし」


鍋へ入れる。


「そして砂糖をたっぷり」


『はい』


俺は砂糖を入れる。


「こんなに入れるのか?」


『ジャムにする場合は必要です』


「なるほど」


火を弱くする。


「後は煮詰める」


『はい』


「問題ないよな?」


『焦がさないように混ぜていただければ問題ありません』


「それなら簡単だな」


俺は木べらでゆっくりとかき混ぜる。

ぐつぐつ。

甘い香りが少しずつ広がっていく。


「……」


「なんか、いい匂いだな」


『糖分と果実の香りが混ざっています』


「これなら子供たちも喜びそうだ」


ゆっくり。ゆっくり。

焦がさないように混ぜ続ける。



「二時間くらいか」


鍋の中身は、かなり煮詰まっている。


「こんな感じだな」


スプーンですくってみる。

とろり。


「おお!これは俺でも分かる!」


『はい。問題ありません』


「ジャムだな!」


『その通りです』


俺は完成したジャムを見る。

鮮やかな色。甘い香り。

そして、パンに塗れば――


「……」


「絶対うまいな」


『はい』


俺は小さな瓶をいくつか用意する。


「これを……」


『先ほどの子供たちに分けてあげることを推奨します』


「そうだな。自分たちで集めた物から作ったんだからな」


『はい』


完成したジャムを小瓶に分ける。


「よし!これでいい」


俺は瓶を眺める。


「砂糖が作れるようになったことで、こんな物まで作れるようになるんだな」


『はい』


「ポテチの時とは、また違うな」


『甘味という新しい選択肢が増えました』


「まずはジャムからか」


『はい』


「パンに塗るだけなら、誰でもできる」


『その通りです』


「なら――」


俺は小瓶を持つ。


「子供たちに届けてくるか」


『はい』


こうして、砂糖を使った最初の甘味が完成した。それは高価な砂糖を使った、ほんの小さなジャム。

けれど、この町にとっては――「甘い物を楽しむ」という新しい生活が始まる、小さな一歩だった。

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