怪しすぎる工場
「しかし……」
俺は少し離れた場所から、砂糖工場を眺めていた。
「この砂糖工場……何も知らない前提で見ると、怪しくないか?」
『……確かに』
「だよな」
目の前には、村では一番大きなレンガ造りの建物。そこへ――
「お?」
屈強な兵士たちが次々と入っていく。
そしてしばらくすると。
「……」
大きな蕪のような植物を大量に積んだ荷車がやってくる。
「それを工場へ運び込んで……」
しばらくすると――
「タタだ」
タタが満面の笑みを浮かべながらやって来る。
「お疲れ様です!」
「……」
「これは私が回収します!」
そう言って、荷車に積まれた植物を嬉しそうに運んでいく。
「……」
俺はアイを見る。
『屈強な男性たちが工場へ入り。大きな蕪のような植物が運び込まれ。その後、タタ様が非常に嬉しそうに回収していく』
「……」
『何も知らない町人からすれば、かなり怪しい光景です』
「だよなぁ……」
「何作ってるんだ?」
「軍の施設らしいぞ」
「でも、あの蕪みたいなのは何だ?」
「さあ……」
そんな声が聞こえてくる。
「これは、そのうち噂になるな」
『その可能性は高いです』
「そうなるよな」
俺は頭を掻く。
「タタのやつめ……かなりテンション高いぞ」
『はい』
「顔が違うもんな」
『目が金マークになっております』
「だよな……」
タタは今日も元気に工場を走り回っている。
「原料はこちらへ!作業員の配置は問題ありません!完成品は倉庫へ!次の原料を運んでください!」
「……」
「めちゃくちゃ楽しそうだな」
『非常に活発です』
「まあ、仕事は全部ちゃんと回してるみたいだけど」
『はい』
「兵士さんたちもちゃんと働いてる」
『はい』
「原料も無駄になってない」
『はい』
「工場も順調」
『その通りです』
「……」
俺は少し考える。
「なら、こっちから何か言うのもな」
『そうですね』
「むしろ俺が口出しすると、余計に怪しまれる」
『その可能性があります』
「だよな」
俺は工場を見る。
「タタに任せるとするか」
『はい』
「多少噂になったとしても、今のところ問題ないだろ」
『現状では、大きな問題は確認されておりません』
「ならいいか」
俺はその場を離れる。
「しかし……」
『はい』
「いつか誰かが、工場の中を見たがるんじゃないか?」
『その可能性はあります』
「その時はどうする?」
『その時に考えればよいと思われます』
「……」
「アイ、結構適当になってきたな」
『誠様の影響と思われます』
「俺のせいかよ」
『はい』
「まあ……」
俺は苦笑する。
「今はタタに任せるか」
『賛成します』
後ろでは、また大きな蕪を積んだ荷車が工場へ向かっていく。
その後ろをタタが追いかけている。
「もっと持ってきてください!まだまだ足りません!」
「……」
「本当に嬉しそうだな」
『はい』
砂糖工場は、今日も静かに稼働している。
ただし――その正体を知らない町人たちの間では、少しずつ疑問が生まれ始めていた。
「あの工場、何を作ってるんだ?」
そんな小さな噂が、やがて町の中へ広がっていくことになる。




