砂糖作りの兵士たち
俺は、兵隊さん達に砂糖の作り方を教えた。
「まず、甜菜を洗って……」
「はい!」
「細かく切って鍋に入れる」
「はい!」
「煮出した液体を、さらに煮詰める」
「なるほど!」
「最後に水分を飛ばして……」
「砂糖になる、と」
「そういうこと」
最初は俺が一つずつ説明していた。
だが――
「隊長さん」
「何でしょう?」
「この方たち、覚えるの早くない?」
「そうでしょうか?」
俺が兵士たちを見る。
作業の手際が、どんどん良くなっている。
「……」
『誠様』
「何だ?」
『非常に効率が良いです』
「だよな」
気になったので、少し話を聞いてみる。
すると――
「実は我々、軍では調理を担当しておりました」
「調理担当?」
「はい」
「なるほど……」
それなら納得だ。
火を扱う。鍋を扱う。大量の食事を作る。
限られた材料で、決められた量を、決められた時間までに用意する。
そう考えれば、砂糖作りとの相性はかなり良い。
「だから、こんなに手際がいいのか」
「軍では大人数分の食事を作りますので」
「なるほどな」
「材料の下処理なども慣れております」
「それなら、連れて来られた理由も分かるな」
砂糖を守る。そして、砂糖を作る。
まさに一石二鳥だ。
『警備と生産の両方を兼ねられます』
「合理的だな」
「ありがとうございます」
俺は作業を眺める。
甜菜を洗う。切る。煮る。液体を濾す。
煮詰める。
それぞれが手分けして動いている。
「……」
「もう俺よりテキパキしてないか?」
『そのようです』
「だよな……」
「誠殿!」
「ん?」
「次はこの量でよろしいでしょうか?」
「ああ、それでいい」
「では、続けます!」
「……」
俺が少し離れても、全く問題なく作業が続いている。
「こつを覚えれば、俺より早いな」
『当然とも言えます』
「料理担当だったんだもんな」
『はい』
俺は隊長と副隊長を見る。
「……」
二人はというと――
「えーっと……これは……こちらでしたか?」
「隊長、そっちではありません」
「そうか!」
「副隊長、火を強くしすぎです」
「あ、すまない!」
「……」
俺は思わず笑ってしまう。
「何か、隊長と副隊長の方がまごまごしてないか?」
『そのように見えます』
「兵士なのに、料理担当に指示されてるぞ」
「……」
隊長がこちらを見る。
「誠殿」
「はい?」
「我々も、そのうち慣れます!」
「もちろん」
「必ず!」
「頑張ってください」
隊長は真剣な顔で頷いた。
「はい!」
副隊長も、
「私も負けません!」
と気合を入れている。
「……」
「何だか立場が逆になってる気がするな」
『適材適所です』
「まあ、そのうち慣れるだろ」
『はい』
◇
その頃。
「……」
俺は外へ出て、建築中の工場を見る。
「おお……」
かなり出来上がってきている。
基礎。レンガの壁。大きな作業場。
原料を運び込む場所。保管する場所。
それぞれが、かなり大きく作られている。
「早いな……」
『はい』
「かなり力を入れてるのが分かる」
『砂糖生産を重要事業として扱っていると思われます』
「だよな」
職人たちも忙しそうに働いている。
「ここまで急いで建てるってことは……」
『需要が大きい可能性があります』
「やっぱり砂糖って、相当な物なんだな」
『現時点では正確な価値は不明です』
「まあ、それはそうか」
俺は工場を見る。まだ完成していない。
それでも、ここが完成すれば――俺一人で作っていた砂糖が、もっと大量に作れるようになる。
「これで俺も少し楽になるな」
『その可能性は高いです』
「兵隊さんたちも、もう作り方を覚えたし」
『はい』
「工場も建設中」
『はい』
「……」
「俺の出番、減ってきたな」
『良い傾向です』
「だよな」
最初は、何をするにも俺が必要だった。
だが今は違う。一度教えれば、誰かが引き継いでくれる。そして、その誰かがさらに効率を上げていく。
「こうやって、俺がいなくても回るようになっていくのか」
『その通りです』
「なら――」
俺は工場を見上げる。
「完成するのを待つとするか」
『はい』
砂糖を守る兵士。砂糖を作る兵士。
そして、それを大量生産するための工場。
町の中で、新たな産業が静かに形になり始めていた。




