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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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お金と食の変化

「とりあえず……」


俺は屋台を見る。


「アイの提案通り、屋台は手の空いた女性陣に任せることにした」


『はい』


「スライスして、揚げる。それを実際にやって見せて、覚えてもらった」


『問題ありません』


「お金のやり取りは、計算ができる人に任せた」


これで、俺が屋台に張り付いている必要はなくなった。


「しかし……」


俺は腕を組む。


「何で全部任せた?」


『?』


「料理ができる人に任せるのは分かる。でも、お金のやり取りまで任せる必要があったのか?」


『そこが重要です』


「お金?」


『はい』


アイが説明を始める。


『この村では、これまで物々交換が基本でした』


「確かに」


野菜と肉。米と道具。

必要な物を、お互いに交換する。

それで生活できていた。


『しかし、外部からの人口流入が増えています』


「商人も来るし、新しく住む人も増えた」


『はい。外部から来た方々は、お金による取引に慣れています』


「なるほど」


『一方で、元々この村に住んでいた方々は、お金を使うことに慣れていません』


「確かに」


俺は少し考える。


「つまり……」


『はい』


「今のうちに、お金のやり取りに慣れてもらう」


『その通りです』


「人口が少ないうちに?」


『はい。人口が増えてから、突然お金による取引を導入すると、混乱が発生する可能性があります』


「なるほどな」


ポテチの屋台は、単なるお菓子の販売ではない。


村人が、


「これを買うには、この金額を払う。この商品なら、この値段」


という感覚を覚える場所にもなる。


「なるほど……意外と重要なんだな」


『はい』


「でも、俺は何をすればいい?」


『食事を一段、上げます』


「……食事?」


『はい』


「ポテチの次ってことか?」


『その通りです』


「んー……」


俺は少し考える。


「美味いから食う、を進めるってことか?」


『はい。食料が安定してきた現在、食事を単なる栄養補給から、楽しみの一つへ変えていくことを推奨します』


「なるほどな。食べるために作るんじゃなくて。美味しいから食べる」


『はい』


「そういう物を増やす」


『その通りです』


俺は嫌な予感がしてきた。


「……で?」


『これから誠様には、新たなメニュー開発をお願いしたいと思います』


「やっぱりか!」


『はい』


「俺でも出来るか?」


『出来ることをやっていただきます』


「はぁー……」


俺は頭を抱える。


「またその言い方……」


『事実です』


「俺、料理人じゃないんだけど」


『存じております』


「だったら――」


『しかし、誠様にはこちらの世界にない料理の知識があります』


「……」


『地球で一般的だった料理の中には、こちらでは珍しい物も多いと思われます』


「まあ、それはそうか」


『それを再現できれば、新たな需要が生まれます』


「需要?」


『はい』


『新しい料理が売れる。料理を作る人が必要になる。材料を作る人も必要になる。材料を運ぶ人も必要になる』


「……」


『結果として、新しい仕事が生まれます』


「食べ物一つで、そこまで広がるのか?」


『町が大きくなれば、食文化も発展します』


「食文化……」


俺は屋台を見る。

そこでは村人たちが、ポテチを袋に詰めている。


「最初は、ただのポテチだったのにな」


『はい』


「それが売れて。お金のやり取りが生まれて。作る仕事ができて。食べる楽しみも増えた」


『その通りです』


「……」


俺は少し笑う。


「じゃあ、次の料理か」


『はい』


「何にする?」


『いくつか候補があります』


「おっ」


『ただし、現在の材料と調理設備を考慮する必要があります』


「そりゃそうだ」


『簡単に作れて、材料が安定して入手でき、販売もしやすい物が適しています』


「なるほど。じゃあ、まずはそういうのからだな」


『はい』


俺は腕まくりをする。


「よし。何を作るか考えるか」


『お願いします』


「でもな……」


『はい』


「また俺が作る係になるんじゃないだろうな?」


『最初は必要です』


「……」


『作り方を教え、売れることを確認し、その後は他の方に任せます』


「なるほど。それならまあ……」


『誠様の役割は、新しい物を生み出すことです』


「……」


俺は町を眺める。建物が増えている。

人も増えている。商人も来る。

市場も、宿も、工房もこれからできていく。

そして今度は、食べ物まで変わっていく。


「生きるために食べる。そこから、美味しいから食べる。さらに、楽しむために食べる……か」


『はい』


「豊かになるって、こういうことなんだな」


『その通りです』


「……」


俺は少しだけ遠い目をする。


「しかし、俺の仕事が料理になるとは思わなかったな」


『料理人ではありません』


「じゃあ何だよ?」


『料理開発担当です』


「結局、料理じゃねーか!」


『合理的な役割分担です』


「はいはい……」


こうして誠には――町づくりとは別の、新しい仕事が増えることになった。


それは、これまで生きるために必要だった食事を、


「楽しむための食事」


へ変えていくことだった。

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