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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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お菓子の誘惑

『誠様! 流石にダラダラし過ぎです』


「やっぱり?」


午後になってから、俺はずっとゴロゴロしていた。町づくりはナナたちが進めている。

ゴミの回収も終わった。特に急ぎの仕事もない。


「でもなぁ……」


俺は腹をさする。


「お菓子食べたい」


『ここにはありません』


「だよなぁ……」


村でお菓子らしいお菓子を食べた記憶はほとんどない。せいぜい果物や保存食。


「簡単なお菓子、作れない?」


『でしたら、ポテトチップスなどはいかがでしょう』


「ポテチ?」


『材料は揃っております』


「じゃあ作れるじゃん」


『スライサーがあれば理想的です』


「あー、あれか」


ジャガイモを薄く均一に切る道具。


「それなら作ってもらうか」


『はい』



俺は職人にスライサーの説明をした。

薄く切るための簡単な道具。

刃を固定して、その上をジャガイモを滑らせる。


「これなら作れそうだな」


職人は図を見ながら頷いていた。


「まあ、そのうち完成するだろ」


そう思ったのだが――


「……」


「ポテチ食べたい」


『先ほどより欲求が強くなっていませんか?』


「だって作れるって分かったからな」


『包丁で薄く切れれば、現時点でも製作可能です』


「包丁で?」


『はい』


「じゃあ試してみるか」


『可能です』


「薄く切って、油で揚げて、塩を振るだけだよな?」


『はい。誠様でも可能です』


「その言い方……」


『事実です』


「まあいい」


俺はジャガイモを用意した。


「さて……」


包丁を持つ。


「薄く……」


慎重に切る。


「……」


一枚。また一枚。


「どうだ?」


『厚さに多少のばらつきがあります』


「やっぱりか」


『ですが、十分に調理可能です』


「よし」


どうにか薄切りにしたジャガイモを並べる。


「後は油で揚げるだけ」


『はい』


鍋に油を入れ温めて、ジャガイモを入れる。


「……」


パチパチパチ。


「お」


油の音が変わってきた。


「そろそろか?」


『はい。良いと思います』


ジュワワワワー。


「うん」


香ばしい匂いが漂ってくる。


「揚がってる! 揚がってる!」


俺は竹のザルを用意する。

揚がったジャガイモを取り出して、油を切る。


「最後に……」


塩を振る。


「おー!」


見た目は少し厚さが違う。

それでも、ちゃんとポテトチップスだ。


「いい感じ!」


『はい』


「美味そう!」


俺は一枚手に取る。


パリッ。


「……」


「うまい!」


『成功ですね』


「これは……」


もう一枚。


パリッ。


「止まらんな」


その時。


「おーい! 誠ー!」


遠くからミィナの声が聞こえる。


「いる……か?」


ミィナがこちらへ近づいてくる。


「何だそれ?」


「……」


「ポテチ」


「ポテチ?」


ミィナが覗き込む。


「何だそれ?」


「食ってみる?」


「貰うぞ!」


「おい」


パリパリ。


ミィナの目が大きくなる。


「……」


「美味い!」


「だろ?」


「もっと食わせろ!」


「ちょっと待て!」


ミィナは次々と手を伸ばしていく。


パリパリ。パリパリ。パリパリ。


「おい!」


「もっと!」


「俺の分!」


「まだあるだろ!」


「いや、それは俺が食う!」


「ケチ!」


「作ったの俺だぞ!」


ミィナは全く聞いていない。

あっという間に皿の上が減っていく。


「……」


俺はアイを見る。


『諦めてください』


「……はい」


パリパリ。


ミィナが美味そうに食べている。


「これ、村のみんなにも食わせようぜ!」


「いや……」


「何だ?」


「これ以上作るの面倒なんだけど」


『スライサーが完成すれば、作業効率は大幅に向上します』


「……」


「じゃあ、早く作ってもらうか」


『その方がよろしいかと』


俺は空になりかけた皿を見る。


「しかし……」


『何でしょう?』


「お菓子一つで、こんなに騒がしくなるとはな」


『娯楽と同様、食の楽しみも豊かさの一部です』


「なるほど。だったら、これも町が豊かになった証拠か」


『はい』


ミィナが最後の一枚を取る。


パリッ。


「あ」


「これ美味いな!」


「……」


「誠、また作ってくれ!」


「……」


『誠様』


「何だ?」


『スライサーが完成するまで、よろしくお願いします』


「俺の仕事が増えた……」


町づくりの合間に始まった、思いがけない新しい仕事。


それは――ポテトチップス作りだった。

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