人が集まる町
俺は午前中、いつものように手引き台車を引いていた。
「さて、今日もゴミ回収だな」
集積場を回りながら、ふと周囲を見渡す。
「……」
「町、出来てきたな」
ゴミを回収するついでに、今日は少し町並みを見て回ることにした。
建築工事は着々と進んでいる。
レンガを積む者。セメントを混ぜる者。
U字溝を設置する者。木材を加工する者。
それぞれが自分の仕事をしている。
「みんな元気そうだな」
『はい。作業も順調に進んでいます』
「最初の頃とは大違いだ」
村ができたばかりの頃は、生きるだけで精一杯だった。
今では、町を作るために働いている。
「……変わったな」
俺は少しだけ感慨にふける。
◇
その間にも、人は増えていた。
「また来たのか」
村の入り口を見ると、数人の新しい住民がやってきている。
「タタの手配か?」
『可能性が高いと思われます』
「毎日、数人ずつか……」
種族も様々だ。人族らしい人。耳の長い人。
体格の大きな人。獣のような耳を持つ人。
「種族は問わずって感じだな」
『はい』
俺は少し考える。
「こっちの世界では、人種……というより種族による差別はあまりないのか?」
『現時点では、そのような傾向は確認されていません』
「まあ、それなら良いことだな」
どんな種族であろうと、この村では働いて、食べて、暮らしている。
「それに……」
俺は新しく来た人たちを見る。
「人が増えるのは、今の町には必要だ」
『労働力という意味でも重要です』
「それだけじゃないだろ」
『はい』
「住民が増えれば、商売も増える」
『その通りです』
◇
「お?」
今度は商隊がやってきた。
一台。二台。さらに後ろからもう一台。
「ひっきりなしだな」
『商業活動が活発になっています』
「確かに」
商人たちは村に荷物を運び込み、村で作られた物を積み込んで帰っていく。
以前より明らかに頻度が増えている。
「これなら、宿屋は必要だな」
『はい』
「商人も泊まる場所があった方が便利だ」
『滞在時間が長くなれば、町で消費される物も増えます』
「それに、便利ならまた来る」
『その可能性があります』
「市場も宿も必要になるわけだ」
俺は商隊を眺める。
「……町らしくなってきたな」
◇
少し先へ進むと、空いていた土地にも変化があった。
「ん?」
杭が打たれている。
その杭を繋ぐように、縄が張られている。
「また区画が増えたな」
『ナナ様の設計によるものと思われます』
「こっちは何になるんだ?」
俺は縄の内側を見る。
まだ何もない。だが、以前よりも区画が増えている。
「家か?」
『住宅地の拡張予定区域と推測します』
「なるほど」
別の場所にも杭。
そこにはさらに大きな区画が取られている。
「こっちは?」
『商業施設、もしくは宿泊施設の可能性があります』
「宿かな?」
『設計図を確認する必要があります』
「まあ、そのうち分かるか」
俺は台車を引きながら進んでいく。
「……」
気付けば、町の至るところに杭と縄がある。
以前は何もなかった土地。
そこに、
「ここには家。ここには道。ここには市場。ここには宿」
と、未来の姿が描かれている。
まだ建物はない。
でも、確実に町が広がっている。
◇
「なあ、アイ」
『はい』
「俺、ゴミ回収しながら町を見て回ってるけど……」
『はい』
「これ、結構面白いな」
『町の変化を毎日確認できます』
「昨日なかった建物が、今日は結構できてる。昨日は何もなかった場所に、今日は杭が打たれてる。新しい人も毎日来る。商人も来る」
『人口、建築物、商業活動の全てが増加しています』
「本当に町になってきてるんだな」
俺は足を止める。
少し前まで、ここはただの開拓村だった。
今は違う。人が集まる。物が集まる。商人が集まる。知識を持つ者も集まる。
そして、新しい建物が次々と作られている。
「人が集まるところには、仕事も集まる」
『はい』
「仕事が集まれば、さらに人が来る」
『その通りです』
「これが町が大きくなるってことか」
『その可能性が高いです』
俺は再び台車を引き始める。
「さて、次の集積場へ行くか」
『はい』
町を歩けば歩くほど、変化が見えてくる。
ゴミを集めながら眺める町並み。
それは、誠にとって――自分たちが作ってきたものが、本当に「町」へ変わっていく姿を確認する時間になっていた。




