ゴミ収集の仕組み
「と言う訳で……」
俺は藁半紙を広げる。
「俺がゴミ収集のルールを作ることになった」
『合理的です』
「まあ、他にやることもないしな」
『その発言には少々疑問があります』
「いいんだよ」
俺は紙に項目を書いていく。
「まず、分別。生ゴミ、木片、金属、陶器、その他の、この五つに分ける」
『問題ありません』
「生ゴミは堆肥にする。木片は燃料に、金属は鍛冶屋へ、陶器は再利用できる物と破損品を分ける。その他は……まあ、今のところ処分だな」
『はい』
「それぞれの集積場を作る。何ヶ所かに分けて設置しておけば、わざわざ町の端まで持っていかなくてもいい」
『住民の負担を減らせます』
「そういうこと」
◇
「集積場はここ」
俺は町の設計図を広げる。
「住宅地の近くに一ヶ所。こっちにも一ヶ所。もう一つは工房の近く。それぞれに竹籠を置く」
村人たちも集まってくる。
「竹籠?」
「ゴミを入れるための籠だ」
「雨が降ったら?」
「屋根を付ける」
『衛生面を考慮すると、蓋も推奨します』
「じゃあ蓋も作るか」
「分かった」
村人がすぐに竹籠の製作に取り掛かる。
「……」
俺は少し笑う。
「竹って便利だな」
『この地域では特に有用な資源です』
「籠にもなる。管にもなる。紙の材料にもなる」
『他にも用途は考えられます』
「本当に万能だな」
◇
「それと、出す時間を決める」
俺は新しい紙に書く。
「ゴミを出すのは、昼まで」
「昼を過ぎたら、次の日」
村人から声が上がる。
「何で昼までなんだ?」
「回収する時間を決めるためだ」
「回収?」
「俺が回る」
「誠殿が?」
「ああ」
俺は手引き台車を見る。
「これで集積場を回って、ゴミを回収する」
「……」
村人たちが微妙な顔をする。
「どうした?」
「いや……」
「誠殿がやるのか?」
「暇だからな」
『正確には、現在ナナ様が町の工程管理を担当しているため、誠様が直接関わる作業が減っています』
「そういうこと。なら、俺がやる」
◇
翌日。
朝から、町のあちこちに竹籠が設置された。
「ここが生ゴミ。こっちは木片。金属はこっち。陶器はここ。その他はここ」
それぞれに分かれている。
「間違えるなよー」
「分かった!」
子供たちも興味津々で覗いている。
「お母ちゃん、これはどこ?」
「生ゴミだよ」
「じゃあ、こっち!」
「そうそう」
最初は戸惑っていた村人たちも、すぐに慣れていった。
そして昼前。
「そろそろ回収するか」
俺は手引き台車を引く。
「まずはここ」
生ゴミの籠。
中には食べ残しや野菜の皮などが入っている。
「結構あるな」
『人口が増えたことを実感できます』
「だな」
次は木片。
「これは……」
木材の切れ端。
「燃料にできる」
金属。
「これは鍛冶屋」
陶器。
「こっちは再利用できそうだな」
そして最後にその他。
「これだけは、今のところ処分か」
『はい』
俺は種類ごとに分けながら、台車へ積んでいく。
「……」
「結構重いな」
『回収作業も立派な労働です』
「分かってるよ」
台車を引きながら、次の集積場へ向かう。
「よいしょ……」
そこでもゴミを回収する。
「なるほど。これなら、町中にゴミが散らばることも減るな」
『はい』
「しかも分別してあるから、その後の処理も楽だ」
『合理的です』
俺は台車いっぱいになったゴミを見る。
「しかし……」
『何でしょう?』
「ゴミって、こんなに出るんだな」
『人が生活すれば、必ず発生します』
「今まで気にしてなかっただけか」
『その可能性が高いです』
俺は台車を引きながら笑う。
「町を作るって、本当に色々あるな」
『はい』
「家を作って、道を作って、水を引いて、下水を整えて、今度はゴミまで集める」
『町には生活がありますので』
「そうだな」
俺は集積場を振り返る。
今までなら、ゴミは各家庭で勝手に処理していた。
でも今は違う。町全体でルールを決めている。
「これも町になってきた証拠か」
『はい』
「……」
俺は手引き台車を引きながら、次の集積場へ向かう。
「まあ、特にすることもないし」
『本当にそうでしょうか?』
「今はいいんだよ」
『……』
「それに、この台車も久しぶりに使うしな」
板ばねの付いた手引き台車が、ゴミを載せて町の道を進んでいく。
その姿は少し妙だった。
だが――これもまた、これから大きくなっていく町には必要な仕事だった。




