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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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町づくりの達人

「しかし、アイ?」


俺は町の工事現場を眺めながら、ふと疑問に思った。


「思っていたよりキツくないよな?」


『はい』


「町を作るっていうから、もっと大変なことになると思ってたんだが……」


実際には、村人たちがそれぞれの作業を進めている。


水路を作る者。U字溝を並べる者。

レンガを作る者。セメントを作る者。

木材を加工する者。


それぞれが忙しく動いているが、混乱している様子はない。


『恐らく、ナナ様が仕事量を調整されているものと推測します』


「調整?」


『はい』


『現在の材料の生産量から建築速度を割り出し、それに合わせて人員配置を行っております』


「マジかよ」


『例えば、レンガの生産が一日でこの量』


『U字溝がこの量』


『セメントがこの量』


『それぞれの生産量を把握した上で、建築側の作業量を決定しています』


「だから、材料が足りなくて工事が止まることがないのか」


『その通りです』


俺は改めて現場を見る。


レンガを運んでいる人。セメントを混ぜている人。水路を作っている人。


それぞれが無駄なく動いている。


「……すげーな」


『はい』


「俺たちがいた世界並みの、計画的な進捗速度じゃないか?」


『そのように見受けられます』


「この世界に、こんなことができる人がいるとはなぁ」


『専門家として非常に優秀です』


「流石のプロって感じか……」


ナナは少し離れたところで、設計図を確認している。


「次はここです」


「こちらの作業が終わったら、三人をこちらへ」


「レンガは明日の午前中に届く予定です」


「それまでは、この部分を進めてください」


「はい!」


村人たちも迷わず動く。


「……」


俺は呆然と眺めた。


「なあ、アイ」


『はい』


「これ、ナナ一人でやってるんだよな?」


『正確には、各専門家や村人の協力があります』


「でも全体を考えてるのはナナだろ?」


『はい』


『本来であれば、数十名規模で計画を立て、各部署へ指示を出す必要がある作業を、ナナ様はお一人で段取りしているものと推測されます』


「数十人分……」


俺はナナを見る。


「……ゼネコン真っ青ってか」


『比較対象が分かりません』


「俺たちの世界の建設会社みたいなもんだ」


『なるほど』


「そこでも一人で全部やるのは無理だろ」


『恐らく』


「それを一人で……」


『ナナ様の能力と経験が大きいと思われます』


俺は腕を組む。


「なるほどなぁ」


ナナが設計図を見る。


職人に話す。村人を配置する。

材料を確認する。工事の進み具合を見る。

そして、次の工程へ。


「……」


「アイ」


『はい』


「彼女が一人いれば、大概のことは問題ないんじゃないか?」


『その可能性は高いと思われます』


「おお……」


なんだか心強い。


「そうなると……」


俺は少し考える。


「俺が楽をできる!?」


『見方によっては、そうなります』


「……」


「なんだよ、その言い方」


『事実を述べただけです』


「もっと素直に言えないのか?」


『では訂正します』


「おう」


『誠様の仕事が減る可能性があります』


「よし!」


俺は思わず拳を握った。


「それは良い!」


『ただし』


「まだあるの?」


『誠様には、今後も新しい問題が発生する可能性があります』


「……」


『町が大きくなるほど、必要となる技術も増えます』


「……やっぱりそうなるか」


『はい』


「楽にはならない?」


『仕事の種類が変わるだけかもしれません』


「……」


俺は遠くを見る。


町の工事は順調に進んでいる。


俺が直接手を出さなくても、村人たちは動いている。


ナナが全体をまとめている。


「まあ……」


俺は笑った。


「それでも前よりは楽だな」


『その認識で問題ありません』


「よし」


『ただし、油断は推奨しません』


「分かってるよ」


町づくりは、まだ始まったばかり。

だが今までとは違う。


誠一人が先頭に立って、全てを考える必要はなくなっていた。


知識を持つ者がいる。技術を持つ者がいる。

経験を持つ者がいる。

そして、それらをまとめる者もいる。


「人が増えるって、こういうことなのかもな」


『はい』


「一人で全部やるより、得意な人に任せた方が早い」


『非常に合理的です』


「なら俺は――」


誠は少しだけ胸を張った。


「楽をしながら、次のことを考えるとするか」


『それも一つの仕事です』


「……本当か?」


『はい』


「なら、堂々と休めるな!」


『……』


「何だよ」


『何でもありません』


アイの返事だけが、妙に冷たかった。

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